ようやく「白痴」を読み終わった。
長かったぁ~。 長編小説はしばらく避けたい気分。疲れるから。 上巻の感想では主人公に比べ周辺人物の印象が薄いと書いたけど、 下巻ではむしろ周辺人物の方が強烈な個性を発揮していた。 特にイポリート。 彼の「弁明」は強烈だった。 死を間近に控えた者の苦しみ、悲しみ、怒りが見事に描写されており、 有無を言わさぬ迫力があった。 彼に同情し哀れみを感じざるを得なかった。 でも作者はこの「弁明」の後、イポリートに滑稽な役を演じさせ、みなに嘲笑させる。 それがいかにもドストエフスキーらしいと思った。 作者の作品に流れる「暗さ」はすごいものがある。 イポリートの「弁明」の中の思考の暗さもそうだが、 イポリートとガヴリーラのやりとりもすごい。 まず作者は凡人論を展開する。 これを簡単に紹介すると、 凡人には2種類あってそのうちの「聡明な凡人」は、 自分に何か才能があると想像しつつも、やはり心のどこかでは自分が凡人であるという事に気がついてしまい、そうであるが故に自分に失望し苛立ち苦しむというものだ。 そしてガヴリーラがまさにその「聡明な凡人」であることを指摘したうえで、 イポリートに彼を侮辱させる。 その言葉が非常に痛烈なのだ。 「・・・あなたが最も傲慢な、もっとも自惚れた、最も俗悪で唾棄すべき凡庸性の典型であり、 権化であり、象徴であるからにすぎません。あなたは高慢な凡庸です。いや、すこしもみずからを疑うことのない、泰然自若たる凡庸です!あなたは月並み中の月並みです。自分自身の思想なんてものはこれっぽっちも、あなたの頭脳にも感情にも、決して宿ることのできないように運命付けらているのです。・・・」(364P) このあともイポリートの侮辱は続く・・・。 ・・・すごいねこれは。暗い。暗すぎる。 立派な人間になりたいと望むものに対して、 これほどの精神攻撃はないのではないだろうか。 ドストエフスキーは人の心の奥底に眠るその人の人格の核みたいなものを、 鋭い描写力をもって白日のもとにさらけ出し、そのうえでそれを思いっきり罵倒し辱める。 そういったことをよくやる気がする。 それを読むことを期待して僕はこの本をとったわけだが、まさに期待通りだった。 物語は結局悲劇的な結末を迎える。 後半にナスターシャが舞台に再登場したあたりから、それは予想していた。 彼女のこれまでの言動や性格から、絶対に公爵を苦しめると思っていた。 アグラーヤとナスターシャの対面の場面は、 あまりの緊迫感と、予感される悲劇に、読んでて緊張した。 ・・・ オススメ度だけど、感想に書いたような部分は非常に面白く読めたが、 途中読んでて退屈なところが多々あった。 全体としては星3つとしておきます。 <オススメ度>★★★
by komuro-1979
| 2004-10-26 18:20
| ロシアの小説
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