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「狭き門」 ジッド 新潮文庫

(あらすじ)
ジェロームとアリサは互いに愛し合うが、アリサはキリスト教上の信仰心から、
その愛を完全に受け入れることを拒み始め、苦しむようになる・・・。

ジェロームとアリサとの手紙のやりとりが良かった。
ああいう、相手を愛する気持ちを素直にしかも情熱的に告白した文章というものを、
思えばこれまで読んだ事がなかったので、新鮮だったし、どこか羨ましさも感じた。
(ちょっと気恥ずかしかったが・・・)

文章が非常に上手いこともあって、
途中までは物語の世界にぐいぐい引き込まれていったのだが、
アリサがジェロームへの愛と信仰とを天秤にかけるあたりから、
感情移入できなくなってしまった。
キリスト教徒ではない自分にとって、ジェロームへの愛と信仰心との葛藤に悩む
アリサの気持ちはまったく理解できないばかりか、滑稽とさえ感じられてしまったのだ。
果たしてキリスト教徒ならば、アリサの心の葛藤を理解する事ができるのだろうか・・・?

そんなわけで小説の後半はいまいち入り込めなかったが、
ただ、アリサの日記の
「・・・主よ、あなたが示したもうその路は狭いのです・・・二人ならんでは
通れないほど狭いのです」
という一文は、あまりに悲しく、強く心を打つものがあった。


<オススメ度>★★★★
by komuro-1979 | 2005-10-26 22:47 | フランスの小説
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