(あらすじ)
1984年、世界は3つの超大国に分割されていた。 そのうちのひとつ、オセアニア国では強力な全体主義体制が確立し、 人々は思想や言語から日常生活のあらゆることまで、完全に管理されていた。 この非人間的体制に疑問を覚えた役人ウィストンは、禁止されていた日記をつけ始める・・・。 人間の尊厳などまったくない、異常な管理社会。 正常な神経をもつ人間ならば、とてもじゃないが生きていかれないはず。 しかし、この国の統治システムは、あらゆる手段を用いて、 人の思想までも徹底的に管理し、いつしか誰も体制に疑問を持たなくなってしまう (持つ動機すら失ってしまう)。 その統治の方法論は、小説の中盤以降で明らかになるのだけれど、 そのあまりの緻密さと無慈悲さに、背筋が寒くなった。 この小説の権力構造に順応している人たちが幸せだとは、どうしても思えない。 でもそれは、今のこの現代日本社会に生きる者の価値観で評価しているからなのだろうか? もしも、この小説のような体制の国に生まれて、それに適合するように育てられたのならば、 自由や人権や平等がない中でも、幸福に生きられるのだろうか? ・・・人間は本能として、自由や人権などを求めるものなのだろうか? そういったことを考えさせられる小説だった。 重くて暗くて救いようがないけれど、すばらしく面白い小説。 超オススメです。 <オススメ度>★★★★★ #
by komuro-1979
| 2006-04-01 23:14
| イギリスの小説
20世紀の絵画の有名どころを採りあげて解説していく中で、
「具象絵画=分かりやすい、抽象絵画=分かりにくい」という一般的感覚に 疑問を投げかけ、新しい解釈パラダイムを提案することを目指した本。 ~主義などの美術用語?が、ろくな説明もなく多用されるので、 僕のような絵画に最近興味を持ち始めた初心者が読むには、 やや敷居が高いと感じた。 そのうえ、著者は抽象的で難しい単語を好んで使うので、 読むのにとても骨が折れる。 もうちょっと簡単な言葉で説明できないものか。 一番不満なのは、紹介される絵画が口絵を除き、すべてモノクロであること。 モノクロの絵画を指して、「この絵の空の青が~」とか言われても、全く伝わらない。 なぜオールカラーにしないのだろうか・・・? このような不満点はあるが、絵画の説明はすばらしい。 僕が今までに考えたこともない、専門家の視点から絵を解釈しているので、 「こんな風な絵の見方もあるんだ」と、素直に感心した。 この本を読んだことで、自分の絵画鑑賞眼が少し精密になった気がする。 <オススメ度>★★★★ #
by komuro-1979
| 2006-03-30 18:06
| 小説以外の本
普段、新聞などで、毎日のように目にする社会調査。
例えば、「死刑制度廃止に賛成○○%、反対○○%」とか、「内閣支持率○○%」とか。 僕はこれまで、こういった調査を目にしても、詳しく分析しようとせずに そのまま受け入れていた。 しかしこの本を読むと、そういう安易な態度がとても危険であることが分かる。 著者は「世の中に蔓延している社会調査の過半数がゴミである」と言う。 そんな大げさな・・・、と思って読み始めるのだけど、 次から次へとどうしようもなく(調査方法や分析が)杜撰な、 ほんとにゴミと呼ぶしかない調査がたくさん出てくるので、 まさに著者の言うとおりであると納得してしまう。 そういうゴミ調査が、大新聞や国家機関によってなされる ことが往々にしてあるというのが恐ろしい。 本書はこのようなゴミ調査の例を多数挙げた上で、それをきちんと批判し、 なぜこういった調査がうまれるのか、その原因を究明するという構成で書かれている。 本書を読み終える頃には、社会調査を批評する基本的な能力を 身つけることができるだろうと思う。 <オススメ度>★★★★ #
by komuro-1979
| 2006-03-27 18:03
| 小説以外の本
突然統計学の勉強がしたくなり、ネットで入門書を探していた時に出会った本。
僕は複雑な数式をみると吐き気を催すような、典型的な文型人間であるから、 マンガがないとダメだ。読む気がしない。 (そもそも、そんなんで統計学を学ぼうとするのは間違っているのだけれど・・・) マンガは非常によくできている。 絵が上手くて、主人公の女子高生がとてもカワイイ。 ギャグもなかなか上手なので、読んでて楽しい。 肝心の統計学の部分は、初学者でも十分ついていけるように、 分かりやすく丁寧に解説してくれるので助かる。 個人的には、受験生時代に散々世話になった「偏差値」がどういうものなのか、 この本を読んでようやく分かったのがうれしかった。 マンガがあるからといって、統計学の理論の理解が進むわけではないが、 勉強の心理的負担がとても軽くなる。 それは初学者が勉強を続ける上でとても重要なことであり、 その点で本書は特にオススメできる。 <オススメ度>★★★★ #
by komuro-1979
| 2006-03-25 01:03
| 小説以外の本
前回読んだバルザックの「幻滅」で、マキアヴェリズムという言葉に出会った。
辞書をひくと、「目的のためには手段を選ばない、権力的な統治形式」とあり、 マキアヴェリという人が、「君主論」という書物の中で説いた考え方であることが分かった。 「幻滅」のなかで神父が説いた悪の道徳論に共通するものを感じ、興味を持ったので、 早速、この本を手にとってみた。 どんな非情なことが書いてあるのかと、楽しみにして読み始めたけど、 書いてあることはどれも真っ当なことのように感じられたので、少々拍子抜けした。 著者が非情な手段を薦めるのも、それが統治のためのもっとも有効な手段である場合に 限定していて、常に非情であれと言っている訳ではなかった。そりゃそうだ。 君主のために書かれた書物であるから、 他国との同盟についてだとか、兵士についてだとか、 現代人にとっては関係がないテーマが多い。 でも、だからといって、読んで無駄とは思わなかった。 というのは、著者の様々な政策論は鋭い人間観察に基づいており、 統治者との関係性のなかで、人間というものがどういうものかを鋭く分析している。 人間の本質が今も昔も変わらないことを考えると、 これらの分析は現代人の人間関係を考える上で、参考になると思えたのだ。 特に、管理職にある人は、読んで損はしないと思う。 <オススメ度>★★★ #
by komuro-1979
| 2006-03-18 19:30
| 小説以外の本
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