「ジャン・クリストフ(二)」 ロマン・ローラン 岩波文庫 

クリストフは、世間一般の人がなんとなく想像する芸術家像、
すなわち、気難しくて非社交的で感情的で、いわゆる変人っぽいという特徴を持っている。
そしてやっぱり世間に理解されない。
彼が、自分の音楽上の信念を貫くために世間と対立し、
ひたすら攻撃され、苦悶する様子は壮絶だ。
人を愛し愛されたいという心を持っているからこそ、
人から排斥される苦痛が大きいのだと言える。
ま~それにしても、世間渡りがあまりに下手すぎるなぁ・・・。

クリストフは、誰も味方のいない孤独な闘いの中、自分の信念を貫けるのか。
彼を理解し愛する人々が登場するのだろうか。
そう思いつつ読んでいたら、最後のほうでオリヴィエが登場。
彼とクリストフとの関係がこの先、気になるところだ。
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-02-22 02:47 | フランスの小説

「ジャン・クリストフ(一)」 ロマン・ローラン 岩波文庫 

(あらすじ)
音楽家の家系に生まれ、幼い頃から音楽家としての才能を開花させたクリストフ。
自分にあまりに正直で、世渡りの下手なクリストフは、世間から様々な苦難を与えられるも、
それでも人を愛し続ける。傷つきつつも戦いをやめない彼の成長の物語。全四巻。

クリストフの幼年期から順をたどって
彼の成長を追っていくストーリーと、精密詳細な心理描写は
自分好みであるが、しかし、ストーリの進み具合に対して
心理描写の量が多く、さすがに読んでて疲れてしまう。
本も厚く、一冊読むのに一苦労。
これをあと3冊か。かなり気合を入れないと・・・。

一巻では、ローザのその報われない心の悲しさが印象に残った。
善良で純粋な心を持ち、あれだけクリストフに尽くしているのに、
顔が悪くておしゃべりという理由であの扱い。
現実なんてそんなものだよなぁ~と思いつつも、ちょっと可哀想だった。
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-02-17 18:51 | フランスの小説

「燃えよ剣(下)」 司馬遼太郎 新潮文庫

最初は正直、時代遅れの考えに固執して、やたらと人を殺しまくる新撰組、
特にその性質が顕著な土方に対して、あまりいい印象を持てなかった。
でも、どんな考え方であれ、それを初志貫徹する姿は心を打つものがある。
どんな苦境に陥っても、自分の生き様を変えず、己の剣で自分を表現する
土方の男らしさに、自然と惹き込まれいった。

今まで新撰組について興味がなく、その歴史について
ほとんど知らなかったが、これを機に色々調べてみたいと思った。
小説の中の隊士たちと、史実での彼らとの違いなどを調べてみると、
面白いかもしれない。
また、予備知識がなかったせいで、当時の時代背景についての小説中の説明、
例えば佐幕派とか尊皇攘夷派などの理解や、どの組織がどういう思想を
持っているのかなどがあまりよく理解できず、途中でこんがらがってしまった。
そこらへんをよく調べて、いずれまた読み返してみたい。


<オススメ度>★★★★
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-02-14 13:09 | 日本の小説

「燃えよ剣(上)」 司馬遼太郎 新潮文庫

簡潔で無駄をそぎ落とした文章のおかげで、
非常にテンポよく話が進んでいくのだが、
しかし、その簡潔すぎる文章が、自分にはあまり合わなかった。
もっと土方の内面に突っ込んだ心理描写が欲しかったし、
自然描写も、もうちょっと詳しく書けば雰囲気が盛り上がったのに、と思う。

また、隊士がその後どうなったとか、
藩と藩との関係を現代の○○に例えたりするなど、
ストーリーの展開と離れて現代の視点から説明する箇所が多いが、
物語の世界から現代に一気に引き戻される感じがして嫌だった。
歴史教科書的な役割を期待してこの小説を読んでいるわけじゃないので、
そういう説明的な文は要らなかったように感じた。

そして、次から次へと事件(殺し合い)が勃発するため、
そのせいで個々の事件の重みをだんだんと感じなくなり、
生死のやり取りの緊迫感を感じなくなってきてしまった。
もっともこれは史実がそうなのだから、しょうがないのかもしれないが・・・。
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-02-11 14:13 | 日本の小説

「ボヴァリー夫人」 フローベール 新潮文庫

(あらすじ)
田舎の医者であるボヴァリーの妻エマは、夫の凡庸さに飽きてしまったために、
情熱的な恋愛を空想しては不倫と借金を重ね、不幸になるという話。

作者の自然描写(客観描写)の鋭さは驚異的だと思う。
情感溢れたやわらかな描写ではなく、機械的正確さをもった描写。
文を読み、目を閉じると、その情景がありありと浮かんでくるようだ。

この描写技術には感心したのだけれど、ストーリーのほうはたいして面白くない。
当時のフランスでは、この小説が風俗を乱すとして問題になったらしいけど、
今の現代社会では、きわどい描写もなにもない単なる不倫小説だ。
先の展開が読めてしまう上に、不倫以外にたいした事件が起こらない。
そのわりには話が長すぎるので、読んでてだれてしまった。

客観的には人並み以上の幸せを手に入れているのに、
もっと自分は幸せになれると誤信し、夢ばかりを追いかけるエマ。
このような女性はどこにでもいるだろうし、
自分の中に、エマのような考え方がないとは言えない。
だからこそ、エマを単純に愚か者だと言って笑えなかった。

エマはどうすれば幸せになれたのだろうか?
どんな人と結婚しても、彼女の根本の考え方を変えない限り、
必ず相手に飽きて、不幸に陥る気がする。
今自分の置かれている、自力では変えられない現状に適応するようにし、
そんな生活から幸せを見つける努力をしていくことぐらいしかないのだろうか。


<オススメ度>★★★
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-02-07 03:10 | フランスの小説

「中平卓馬の写真論」 中平卓馬 リキエスタの会

この本は某書籍通販サイトで、なんとなく注文してみたのだけれど、
予想外の大当たりだった。
著者の感性の鋭さ、優れた分析力に圧倒されまくり。
写真論とあるが、芸術論、メディア論としても読める。
やや難しめの歯ごたえのある文章が並んでいるけど、
その内容の面白さと、わずか84Pという薄さとが相まって、あっという間に読み終わった。
著者のことは全く知らなかったが、
すごい有名な写真家らしいことを後で(ネットで調べて)知った。

全般的にとても面白かったのだが、ひとつだけよく分からなかった点がある。
著者は、主観を世界に投影すること、つまり、
自分の「世界はこうあるべき」というイメージから出発して世界を認識し、
その認識を作品に反映させるという今までの手法を止めて、
自分の主観から離れ、世界そのものの(客観的な)姿をとらえて、それを作品にすべきという。
しかし、作品を作る際に、自分の主観から離れるなんてことは、本当に可能なのだろうか?

また、そもそも、自分の主観から出発して世界を捉えて作品化することが、
なぜいけないのか。
著者は、それは人間の思い上がりだというが、それだけでは説明が足りないように感じた。


<オススメ度>★★★★★
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-02-02 03:41 | 小説以外の本

「メディア批判」 ブルデュー 藤原書店

これまで、メディア批判(主にテレビ批判)と聞くと、
メディアと国家権力や商業主義との結びつきや、
視聴率至上主義に対する批判を思い浮かべていた。
この本ではそれに加えて、
メディアの政治・思想・文学・芸術に対する影響まで分析し、
メディアがそれらを貧困化して瀕死の状態にさせているとまで言い切っているのが、
とても新鮮で面白かった。

これを読むと、ワイドショーなどによく登場してくる識者たちを、
無意識的に批判的な目で見てしまうこと請け合いである。
(・・・これは余談だけど、テレビのワイドショーなどである問題を扱う場合に、その問題の専門家に解説を求めるのはいいのだけれど、彼らがコメンテーターとして番組に常駐し、専門外のことまでしたり顔で意見を言う様子に腹がたってしょうがない。彼らは恥ずかしくないのだろうか。専門外のことは素人だろと、つっこみたくなる。)

本の内容は文句がないのだけれど、
翻訳本独特の読みにくさがあるために、文章の流れがつかみにくい。 
また、フランスのメディアを例に挙げて説明しているが(著者はフランスの社会学者)、
日本人には馴染みがないのも辛い。
その点をマイナスして、オススメ度は★4つにします。


<オススメ度>★★★★
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-01-30 01:49 | 小説以外の本

「ファウスト(下)」 ゲーテ 新潮文庫

上巻は楽しめたのだが、下巻は楽しめず。
半分ぐらい読んだところで挫折・・・。

楽しめなかった一番の原因は、ギリシア神話に関する自分の知識のなさにあった。
下巻では、ギリシア神話上の人物たちがたくさん登場し、
相互に会話を始める。しかもそれが延々と続く。
なので、神話に関する知識がないときつい。きついと言うか、お手上げだ。
僕は登場人物たちの性格や相互の関係などが全く分からず、
彼らの会話の面白さをほとんど理解することができなかった。

結果、ただなんとなく字面を追うだけの退屈な読書になってしまい、
こんな調子で最後まで読んでも何も残らないと思ったので、読むのをやめた。
作中にある詩的で美しい言葉や、含蓄ある言葉を、
ほんとはもっと味わいたかったのだが。

・・・
これからこの小説を読んでみようと思っている方は、
まずはギリシア神話の学習から始めたほうがいいかもしれません・・・。


<オススメ度>★★(挫折)
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-01-27 03:43 | ドイツの小説

「ファウスト(上)」 ゲーテ 新潮文庫

(あらすじ)
知識欲に溢れ、様々な学問を習得した大学者ファウストが、
世界の根源を究めようとして、魔法で悪魔(メフィストーフェレス)を呼び出し、契約をする。
若返りの薬を飲まされた彼は、少女グレートヒェンに恋をするが・・・。

この本は常々読みたいと思っていたのだけれど、
戯曲ものは苦手なので、今まで敬遠していた。

読み始めてまず、言葉がとても詩的なのが印象に残った。
日本語でも十分美しさが分かるのだが、できれば原書で読みたかった。
日本語に訳す過程で、どれだけ原作者の意図から離れて、
言葉それ自体の美しさが失われてしまったのだろうかと思うと、とても残念に感じる。
(この本の翻訳が悪いということではなく、翻訳するということそのものの限界の話です)

ストーリーは、ところどころ巻末の注釈を参照しなければ
意味がとれないところがあるが、基本的には分かりやすい。
世間と交わることを避けていたファウストが、
メフィストーフェレスによって力を与えられて世間と交わり、
その考え方を変化させていく過程は面白い。
えらそうなことばかり言っていたファウストが恋に夢中になる様子は、ちょっと可愛かった。
しかし、その恋の結末があまりに残酷だったのが、強く印象に残った。
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-01-25 02:27 | ドイツの小説

「常識として知っておきたい世界の三大宗教」 歴史の謎を探る会〔編〕 河出書房新社

仏教・キリスト教・イスラム教を、
開祖、聖典・経典、教義などの観点から対比しつつ、
それぞれの宗教の概要を説明している。

キリスト教とユダヤ教の違い、キリスト教のカトリックとプロテスタントの違い、
イスラム教のスンニ派とシーア派の違いや、
仏教における初七日と四十九日の法事の意味など、
基本的でありながらも自分の知らなかったところを、
わかりやすく解説してくれたのでとても助かった。
ここに書いてあることを押さえておけば、常識レベルとしては十分だろうと思う。


<オススメ度>★★★★
[PR]
# by komuro-1979 | 2006-01-19 02:48 | 小説以外の本