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「必笑小咄のテクニック」 米原万里 集英社新書

小咄の構造を分析し,12種類に分けた上,各構造ごとに章立てし,
それぞれの章ではその構造に沿った小咄の例を豊富に紹介しながら説明している。
また,各章の最後には練習問題がついている。

小咄がきちんとした構造を持っていることは驚きであった。
この本に書かれていることを意識しながら,小咄を作る訓練?をしていけば,
いずれは笑いのとれる小咄を自分で作ることができそうな気がしないでもない。
例として紹介されている小咄はどれも面白く,読んでいて単純に面白い。

しかし,この本には,どうしても気に入らない点がある。
それは,著者が突然,小泉元総理の靖国神社参拝やその他諸々の政治的言動を採りあげて,批判を始めることだ。それもかなり高いテンションで。一応,話の流れに沿うように,小泉元総理の発言を小咄風にして紹介するのだが,小咄としては全く面白くない。その上,著者の元総理批判は見方が偏りすぎていて稚拙であり,その点でも救いようがなく,読んでて冷めるばかりだ。

その点を除けば,良書であると思う。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2006-12-19 22:09 | 小説以外の本

「冷血」 カポーティ 新潮文庫

アメリカのカンザス州で起きた一家4人惨殺事件を基にしたノンフィクションノベル。

小説はまず,殺害されたクラッター一家の構成員の紹介から始まり,事件を経て,一家と付き合いのあった人たちの証言,地域の人々の不安感などを描写し,中盤に差し掛かってようやく犯人であるペリーとディックに焦点が移る。
そして彼らの事件後の行動を描写しつつ,その生い立ちなどを紹介した上で,逮捕され,裁判にかけられ,死刑が執行されるまで,彼らの言動を追い続けて小説は終わる。

序盤,クラッター一家の人たちについての描写が少ないように感じられた上,その描写も,妻が病気を持っていること以外は,絵に描いたような幸せな一家としか描かれておらず,個々の家族に対して感情移入できなかった。
そのせいで事件の衝撃と悲惨さが,自分の中で減じられてしまったような気がした。
また,上述の一家と付き合いのあった人たち証言は,クラッター一家の素晴らしさと事件に対する怒りや不安を述べるばかりで,ただただ退屈であった。

しかし,ペリーとディックに焦点が移る中盤以降,急速に小説に惹きつけられた。
この様な事件を起こす人間は,一体どんなことを考え,またどのような人生を送ってきたのだろうという興味によって, 自然とページを繰る手が早くなってしまう。
特に知りたかったのは,犯行の動機。
なぜ2人はこのような残虐な事件を起こさなければならなかったのか,その理由を探ろうと読み進めるのだが,ペリーとディックの事件についての供述をいくら読んでみても,明確な,そして納得できる答えというものは出てこない。
ただ,途中,精神科医の書いた論文が紹介されており,その中で今回の犯行の動機について,一つの答えとなりうるようなものが示されていた。もちろんこれは一つの意見にすぎず,現実は全く違う動機なのかもしれないが,もし仮に動機がこの通りであるとすると,殺人を犯す動機なんてものは,こんな不明確なもので,ちっぽけなもの(という表現は適切ではないのかもしれないが)なのかもしれないと,ある種の諦め感じつつ受け入れる自分がいる一方で,こんな理由で4人も惨殺してしまう人間の心の恐ろしさと,やるせない怒りを感じる自分もいた。

この小説は,現実に起こった事件を扱っていることから,他の普通のフィクションの小説とは,リアリティが全然違う。淡々と事件の経緯を追っていくその描写に迫力を感じた。

長い小説ではあるけど,一読の価値はあります。
ぜひ読んでみてください。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-12-17 19:48 | アメリカの小説