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「メディア批判」 ブルデュー 藤原書店

これまで、メディア批判(主にテレビ批判)と聞くと、
メディアと国家権力や商業主義との結びつきや、
視聴率至上主義に対する批判を思い浮かべていた。
この本ではそれに加えて、
メディアの政治・思想・文学・芸術に対する影響まで分析し、
メディアがそれらを貧困化して瀕死の状態にさせているとまで言い切っているのが、
とても新鮮で面白かった。

これを読むと、ワイドショーなどによく登場してくる識者たちを、
無意識的に批判的な目で見てしまうこと請け合いである。
(・・・これは余談だけど、テレビのワイドショーなどである問題を扱う場合に、その問題の専門家に解説を求めるのはいいのだけれど、彼らがコメンテーターとして番組に常駐し、専門外のことまでしたり顔で意見を言う様子に腹がたってしょうがない。彼らは恥ずかしくないのだろうか。専門外のことは素人だろと、つっこみたくなる。)

本の内容は文句がないのだけれど、
翻訳本独特の読みにくさがあるために、文章の流れがつかみにくい。 
また、フランスのメディアを例に挙げて説明しているが(著者はフランスの社会学者)、
日本人には馴染みがないのも辛い。
その点をマイナスして、オススメ度は★4つにします。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-01-30 01:49 | 小説以外の本

「ファウスト(下)」 ゲーテ 新潮文庫

上巻は楽しめたのだが、下巻は楽しめず。
半分ぐらい読んだところで挫折・・・。

楽しめなかった一番の原因は、ギリシア神話に関する自分の知識のなさにあった。
下巻では、ギリシア神話上の人物たちがたくさん登場し、
相互に会話を始める。しかもそれが延々と続く。
なので、神話に関する知識がないときつい。きついと言うか、お手上げだ。
僕は登場人物たちの性格や相互の関係などが全く分からず、
彼らの会話の面白さをほとんど理解することができなかった。

結果、ただなんとなく字面を追うだけの退屈な読書になってしまい、
こんな調子で最後まで読んでも何も残らないと思ったので、読むのをやめた。
作中にある詩的で美しい言葉や、含蓄ある言葉を、
ほんとはもっと味わいたかったのだが。

・・・
これからこの小説を読んでみようと思っている方は、
まずはギリシア神話の学習から始めたほうがいいかもしれません・・・。


<オススメ度>★★(挫折)
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by komuro-1979 | 2006-01-27 03:43 | ドイツの小説

「ファウスト(上)」 ゲーテ 新潮文庫

(あらすじ)
知識欲に溢れ、様々な学問を習得した大学者ファウストが、
世界の根源を究めようとして、魔法で悪魔(メフィストーフェレス)を呼び出し、契約をする。
若返りの薬を飲まされた彼は、少女グレートヒェンに恋をするが・・・。

この本は常々読みたいと思っていたのだけれど、
戯曲ものは苦手なので、今まで敬遠していた。

読み始めてまず、言葉がとても詩的なのが印象に残った。
日本語でも十分美しさが分かるのだが、できれば原書で読みたかった。
日本語に訳す過程で、どれだけ原作者の意図から離れて、
言葉それ自体の美しさが失われてしまったのだろうかと思うと、とても残念に感じる。
(この本の翻訳が悪いということではなく、翻訳するということそのものの限界の話です)

ストーリーは、ところどころ巻末の注釈を参照しなければ
意味がとれないところがあるが、基本的には分かりやすい。
世間と交わることを避けていたファウストが、
メフィストーフェレスによって力を与えられて世間と交わり、
その考え方を変化させていく過程は面白い。
えらそうなことばかり言っていたファウストが恋に夢中になる様子は、ちょっと可愛かった。
しかし、その恋の結末があまりに残酷だったのが、強く印象に残った。
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by komuro-1979 | 2006-01-25 02:27 | ドイツの小説

「常識として知っておきたい世界の三大宗教」 歴史の謎を探る会〔編〕 河出書房新社

仏教・キリスト教・イスラム教を、
開祖、聖典・経典、教義などの観点から対比しつつ、
それぞれの宗教の概要を説明している。

キリスト教とユダヤ教の違い、キリスト教のカトリックとプロテスタントの違い、
イスラム教のスンニ派とシーア派の違いや、
仏教における初七日と四十九日の法事の意味など、
基本的でありながらも自分の知らなかったところを、
わかりやすく解説してくれたのでとても助かった。
ここに書いてあることを押さえておけば、常識レベルとしては十分だろうと思う。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-01-19 02:48 | 小説以外の本

「自分を知るための哲学入門」 竹田 青嗣 ちくま学芸文庫

前回、同じ著者の「愚か者のための哲学」を読んで面白かったので、
この本を手に取った。

本の前半では、著者と哲学との出会いから、
哲学が自分の人生にどのような影響をもったかを中心に書かれている。
ここでは、著者が若かりし頃に抱えていた悩みが哲学によって解消されたという、
その過程が面白かった。
この経験から、著者の哲学に対する考え方、すなわち、
「哲学とは自分を深く知るための、他者とほんとうに関るための、もっともすぐれた技術」
であり、役に立たねば無意味だ、という考え方が生まれたのだろう。
こういう視点をもっているからこそ、著者の書く本は面白いのだと思う。
(といっても2冊しか読んでないが・・・)

後半では、ギリシア哲学から現代哲学までを概括的に取り扱っていて、
より学問チックになっている。
哲学者たちの難しい学説がいろいろ紹介されるのだけど、
哲学者の言葉の後に、著者がそれを自分の言葉で分かりやすく説明してくれるので、
哲学初心者でも十分ついていける。
始めて本格的に触れる哲学の世界に、知的好奇心が刺激されっぱなしだった。

哲学の世界に興味はあるけど、敷居が高そうで尻込みしていた人にオススメします。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-01-17 02:29 | 小説以外の本

「ドン・キホーテ(三)」 セルバンデス 岩波文庫

前巻と同じく、ドン・キホーテに関する描写は退屈な一方、
彼を取り巻く登場人物たちの身の上話は面白い。
これらの身の上話には、かなりたくさんのページが割かれているので、
ドンキホーテの存在を忘れそうになる。というか、忘れたくなる。
彼が登場すると、とたんにつまらなくなるから。
小説を読んでいて、主人公に対してこんな気持ちになったのはあまり記憶にない。
最後の方は、ドン・キホーテの会話はほとんど飛ばして読んでしまった。

なんで、肝心のドン・キホーテの描写があれほどまでに退屈なのだろうか?
いつも一本調子で辟易する。
退屈に感じるのは、騎士道物語についての知識が自分にないせいもあるだろうど、
もっと面白おかしく書けなかったものか。
あんな面白い余談が書ける作者なら可能だったはず。

もしかしたら、これはドン・キホーテがメインでなく、
登場人物たちの身の上話がメインの小説だったのか??
・・・それとも、自分の笑いのツボが他人とずれているのだろうか・・・?

これで前編三巻を読み終えた。
前編が出版され好評だったために、
後編の三巻が10年後ぐらいに執筆されたそうだけど、
前編がこれでは、ちょっと読む気になれないなぁ。


<前編のみのオススメ度>★★
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by komuro-1979 | 2006-01-14 19:30 | その他の国の小説

「ドン・キホーテ 前編(二)」 セルバンデス 岩波文庫

一巻ではサンチョの話が面白かったが、二巻でも、
ドン・キホーテの旅物語より、彼が途中で会った人物たちの長い身の上話などの
本筋から離れた部分のほうが断然面白い。
ドンキホーテの騎士道狂いのシーンって、面白いのか??
いつも同じ調子なので、飽き飽きしてしまう。

ただ、カルデニオやドロテーアの錯綜した人間関係問題に、
ドン・キホーテがどんなふうに関わっていくのか楽しみではある。
ドン・キホーテ単体では面白くないが、
彼が他人の問題に首をつっこむときに、はじめて面白くなりそうな予感が生まれる。
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by komuro-1979 | 2006-01-12 19:41 | その他の国の小説

「ドン・キホーテ 前編(一)」 セルバンデス 岩波文庫

(あらすじ)
騎士道本を読みすぎて頭がおかしくなった中年の男が、
古ぼけた甲冑と、やせこけた馬に乗って、農夫のサンチョと共に旅に出る。
その道中、彼は妄想からくる突拍子もない行動を繰り広げ、行く先々で嘲笑される・・・。
前編三巻、後編三巻の全六巻。スペインの小説。

全般的に退屈だった。
ドン・キホーテは、妄想から、例えば、風車を倒すべき邪悪な巨人と思い込んで突撃し、
風車の羽に弾き飛ばされるなどの奇行を繰り返す。
たしかにユーモラスなのだけれど、
思い込み→突撃→返り討ち→大怪我というパターンを何度も何度も繰り返されると、
いい加減飽きてくる。
他には特に目を引く風景描写も心理描写もないので、
作者のユーモアに飽きた場合、この小説は全く楽しめないものになってしまう。

退屈さをこらえつつ読んだ中、一点だけ大爆笑した箇所がある。
それはサンチョがドン・キホーテに向かって話した羊飼いの物語。
話の内容はともかく、あんな突然に、しかも理不尽な終わり方をする物語を
未だかつて聞いたことがない。
ここだけは自分の笑いのツボにはまりまくった。
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by komuro-1979 | 2006-01-09 19:09 | その他の国の小説

「使える弁証法」 田坂広志 東洋経済

哲学者ヘーゲルの弁証法を使って、IT社会の未来を予想するという
この本のコンセプトはとても面白い。

しかし、マイナス点が多い。
まず、形式面で言うと、やたらと無駄な空白が多いのがいただけない。スカスカだ。
この本の本文は195ページだけれど、行をつめれば100ページぐらいに圧縮できそうだ。

肝心の内容面について言うと、
ここで紹介された弁証法の各法則を現実社会の事象に当てはめるのは、
難しいように思える。
例えば、「否定の否定による発展」の法則を考えてみたとき、
その法則の適用以前に、そもそも何と何が対立しているのかを見抜くこと自体が難しい。
本の中で著者は、これらの法則が当てはまった事例をたくさん挙げているのだけれど、
どれも結果論のように思えてしまった。

・・・
結論として、オススメできません。
ただ、アイディアは面白いので立ち読みの価値はあります。
スカスカなので、一時間もかからずに読み終わることができるでしょう。

<オススメ度>★★
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by komuro-1979 | 2006-01-06 19:28 | 小説以外の本

「デイヴィッド・コパフィールド(五)」 ディケンズ 新潮文庫

(以下2段落はネタバレです)

死の床に就いたドーラの、主人公に対する純真な愛情、
特に、死の間際にアグネスに対してお願いをするエピソードには心が打たれた。
ドーラのあまりの子供っぽさにうんざりし、嫌いな登場人物になっていたが、
ここはホロリとさせられた。

個性的な登場人物の多いこの小説の中で
アグネスがあまりにも完璧すぎる女性として描かれていて、
それが彼女の個性を失わせていた気がする。
そのせいなのかどうか分からないが、
主人公がいずれアグネスと再婚して幸せになるという展開になるのだろうと、
読んでて途中から予想してしまった。
あんな完璧な女性が近くにいるのに、
他の女性に心奪われるなんてことがありうるのだろうか・・・?

(ネタバレ終了)

全体の感想。
5冊と長かったけど、あっという間に読み終わってしまった。
ディケンズの小説は小難しさが全くなく、気軽に読めるのがいい。
これまで何度か書いたように、登場人物の特徴が強調されすぎているのが
ちょっと気になるけど、だんだんとそれに慣れてきて、
この小説のどことなくほんわかとした雰囲気作りに、
なくてはならないもののように思えてくる。

主人公が様々な苦難に会い、その都度、善き友人、親類などに助けられ、
そんな中で自分を磨いて成長し、苦難に打ち勝ち、幸福になるというストーリーは、
ありふれたものかもしれないが、そうであるがゆえに安心して読める。
特に良かったは、幸せに満ち溢れたラスト!
こんな風な、読み手の心まで幸せにするような終わり方をする小説を、
久しぶりに読んだ気がする。心がとても温かくなった。


<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2006-01-04 03:38 | イギリスの小説