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「デイヴィッド・コパフィールド(三)」 ディケンズ 新潮文庫

いきなり話の展開が急になった。
今まで張られていた伏線が、ここで一気に爆発した感がある。

善良な人たちの、絵に描いたような温かくて幸せな家庭が、
残酷な形で崩壊するのを見るのは心苦しい。
でも、そういうほんとうに苦しいときこそ、
その人間の本質というものが浮かび上がるのだと思う。
この巻ではそれがちゃんと描かれていて、登場人物たちに深みを与えていた。

あの不平の塊だったミセス・ガミッジの変わりようといったら・・・。
心にぐっとくるものがあった。
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by komuro-1979 | 2005-12-30 14:25 | イギリスの小説

「デイヴィッド・コパフィールド(二)」 ディケンズ 新潮文庫

もうちょっと主人公の内心についての深い描写が欲しかったかな~と思う。
客観的に見て、主人公の境遇はかなり苦しいのに、
その割には彼の心の苦痛についての描写が、あっさりしすぎている気がする。
もっとも、そういう深刻な心理描写はこの小説の雰囲気に合わない気もするし、
単に好みの問題なのかもしれないが。

2巻では、いろいろと面白そうな伏線が張られた。
それがこの先どう料理されるのか楽しみだ。
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by komuro-1979 | 2005-12-27 21:23 | イギリスの小説

「デイヴィッド・コパフィールド(一)」 ディケンズ 新潮文庫

(あらすじ)
生まれる前に父を亡くすも、母と幸せな生活を送る少年コパフィールド。
しかし、母親の再婚によって、そんな幸せな生活は終わりを告げる。
その後、コパフィールドは様々な苦難に遭いつつも、周囲の人間に助けられつつ成長し、
最後に幸せを手に入れる。全五巻。

最初は、子供向けのアニメに出てきそうな、身体的・精神的特徴を強調した登場人物、
例えば、あまりに太っていて、感情が高まるとシャツのボタンがはじけ飛んでしまう女中や、
校長という権威者の腰巾着で、常に校長のそばを離れず、
校長の言うことをそのまま繰り返すスピーカーのような男などのオンパレードに、
ちょっと気が滅入った。どうも肌に合わない。

しかし、そう感じつつも、さすがはモームが世界十大小説に挙げるだけあって、
読んでいると知らず知らずのうちに物語の中に引き込まれていく。
幸と不幸との間をめまぐるしく行き来する主人公の先行きが気になって、目が離せないのだ。
挿絵も趣があってとてもいい!
今後の展開に期待を持たせる一巻だった。
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by komuro-1979 | 2005-12-25 00:32 | イギリスの小説

「金閣寺」 三島由紀夫 新潮文庫

(あらすじ)
吃音(どもり)によるコンプレックスにまみれた青年僧が、金閣寺に放火するという話。

難しい。一回読んだだけでは、作者の言わんとすることをちゃんと理解できなかった。

まず、比喩が難しい。とても技巧的なので、頭にすっと入らない。
この小説は最後までそういう難しい比喩に溢れているので、
一文一文かなり気合を入れて読まねばならず、
比喩の解釈に気をとられているうちに、全体の流れを見失ってしまった。
「木を見て森を見ず」状態になってしまったのだ。

次に、主人公は、コンプレックスの塊のような人間であるがゆえに人生を楽しめないのだが、
彼のその屈折した心情がなかなか理解できなかった。
僕は主人公のような質のコンプレックスを抱えたことがない上に、
心理描写が、難しい比喩と抽象的概念を用いてなされているので、
なおさら分かりにくかった。

では、楽しめなかったのかというと、そうではない。
比喩は難しいのだけれど、とてもよく練られていて、感心しきりだった。
そのものの本質をずばりと突いた、切れ味鋭い比喩とでもいえばいいのだろうか。
天才的な日本語感覚だと思う。
あと、ところどころで披露される、作者の哲学がとても印象的だった。
「われわれが突如として残酷になるのは、うららかな春の午後、よく刈り込まれた芝生の上に、木洩れ陽の戯れているのをぼんやり眺めているような、そういう瞬間だ」という一文は、
特に印象に残った。

すごい小説であることは間違いない。感覚的にそう思った。
だから絶対に再読したいと思う。
この小説は何度も読み返すことによって、
初めてその面白さが十分に現れてくるような気がする。
次回読むときは、主人公と金閣寺との関係の変遷を、もっとちゃんと掴みたい。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2005-12-23 19:20 | 日本の小説

「まなざしのレッスン」 三浦篤 東京大学出版会

僕はいつも、美術館に行って絵を見るときは、
なんとなくボーっとその絵を見て、漠然と綺麗だとか美しいだとか思うだけだった。
絵を評価するにも、評価の基準と絵を語るための言葉が自分の中になく、
大雑把な鑑賞しかできなかったのだ。
それはそれで楽しいのだが、やはりどこか、絵を見る楽しみというものを
十分に味わってないような気がしていた。そんな折、この本に出会った。

この本は14世紀から19世紀始めごろまでの西洋絵画を
テーマ別(例えば宗教画、風景画など)に解説していく中で、
絵画一般の鑑賞の仕方を伝えようと試みている。
読者に絵の知識を得させようとすることよりも、
絵を見ることの意味を分からせることを主眼に書かれているのだ。
扱う絵画は180点以上(うち12点だけがカラーなのが残念)。
著者が東大で行った講義を基に口語体で書かれているので読みやすい。

これら多数の絵画を見ながら著者の解説を読むうちに、
なんとなくおぼろげながら、絵をちゃんと鑑賞することがどういうことかが見えてきて、
今までの自分の絵画鑑賞がどれだけ底の浅いものであったかを思い知った。
この本にもっと早く出会っていれば・・・。
読んだ後、さっそく美術館に行きたくなってしまった。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-12-20 17:47 | 小説以外の本

「愚か者の哲学」 竹田 青嗣 主婦の友社

哲学って、ずっと実生活とは無関係な観念的な問題ばかりを扱う学問だと
勝手に思っていたけど、この本を読んでそれが間違いだったということに気づいた。
哲学は、自分自身の悩みや、自分と他人、自分と社会などとの関係について語る
言葉をたくさんもっていて、実社会生活をよりよく生きるためのヒントを与えてくれる
学問でもあるんだなと、認識を改めた。

この本は、一般人に身近なテーマを取り上げ(例えば「いたずら」「自己愛」「初恋」など)、
各テーマについて検討するその始めに、哲学者の言葉を挙げ、
それを解読しながらテーマについての考察を深める形になっている。
哲学者の言葉は難解で、最初は意味不明だったり、ピンとこないことが多いけど、
著者の解説を読み終わった後には、なんて含蓄のある深い言葉だろうと感心してしまう。

読むにあたっては哲学の予備知識はまったく不要で、
自分みたいな哲学初心者でもすらすら読めた。
悩み多き人に特にオススメです。

<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2005-12-17 01:36 | 小説以外の本

「人生の短さについて 他二編」 セネカ 岩波文庫

表題のほか、「心の平静について」「幸福な人生について」の二編が収録されている。
著者はセネカ(前4年頃-後65年)。

こんな昔の時代に生きていた人が書いたものがちゃんと残っていて、
今それを読むことができるというのは、なんだか不思議な感じがする。
気の遠くなるような昔に書かれたというただその事実だけで、読んでみたい気にさせられる。

早速、読んでみると、昔も今も人間の本質というものは変わってないことに気づく。
みな同じようなことで悩んでいるし、そのような悩みに対する著者の考察も
特に違和感なく受け入れられる(後述のように、結論部分は除く)。
含蓄に富んだ記述が多く、中味は濃い。
人物名とか事件名を変えるなどして体裁を現代風にアレンジし、
最近書かれたものとしてそのまま出版しても、十分に通用する気がする。

ただ、個人的には、著者の各テーマに対しての結論部分は、あまり納得できない。
あまりに禁欲主義的すぎて、現代人の感覚にマッチしない気がするのだ。
例えば、財産は持ってもいいし、持つことは持たないことより望ましいが、
持ったとしても決して執着してはならず、財産が失われようとするときにも
失われるがままにしておくのがよい・・・という。
確かに、そんな風に、あらゆる欲望に対して超然としていれば、
欲望に心が乱されることがなく平穏に暮らせるだろうが、
そんなことは現実には不可能だと思うし、仮にそれが可能であるとしても、
そんな生活は果たして幸福なのだろうか?
著者は、徳に従って生きていれば、そういう生活でも幸福が得られるというが・・・。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2005-12-15 03:09 | 小説以外の本

「レ・ミゼラブル(五)」 ユゴー 新潮文庫

やっぱりヴァルジャンとジャベール。
この2人が登場しないと面白くない。
ジャベールはこれまでは冷徹無比でただただ嫌なやつだったけれど、
この巻ですっかり印象が変わってしまった。
彼は職務を行うときに、法を厳格に守り執行すること以外、
何も考えないようにすることによって、いわば思考停止の状態に自分を置き、
法を超えた真実・正義というものから目を背けて自分の心を守っている、
弱い人間だったのかもしれない。

それにしても、ヴァルジャンが憐れでならなかった。
若い頃、生きるためにたった一つのパンを盗んだだけで、
人生の楽しみを根こそぎ奪われ、
中年になってようやく手に入れた幸福もまた手放さねばならない。
こんな悲しい話があるだろうか。
自分の家からコゼットの住む家に向かって出かけては途中で引き返すその姿は、
あまりに憐れで涙を誘った。

全体の感想。
非常に面白かった。間違いなく名作だと思う。
何がそう感じさせるのか考えると、ストーリーそれ自体の面白さは言うまでもないが、
心理描写のうまさ(特に内心の葛藤の描写)にあると個人的に思った。
例えば、一巻に出てくる司祭や改心したあとのヴァルジャンは、
どちらも聖人として登場するが、完全な聖人として描かれているのではなく、
内心では嫉妬や欲望などから逃れられずに苦悶する、
その様子が克明に描かれていることが、人物に対する深みを増し、
ひいては小説の中で繰り広げられる人間ドラマをより味わい深いものにしていると感じた。

ストーリーにちょっとご都合主義だと感じる部分があったり、
余談があまりに長かったりするけれど、
それを補って余りある面白さ。超オススメです。

<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2005-12-10 23:05 | フランスの小説

「レ・ミゼラブル(四)」 ユゴー 新潮文庫

この巻ではマリユスがかなり重要な役割を果たすのだけれど、
彼という人物がどうも好きになれなかったせいで、
前半のマリユスとコゼットの恋愛の部分は、あまり感情移入できなかった。

なんでマリユスが好きになれないのだろう?
たぶん、経済的にも思想的にも地に足がついてないし、
また、恋愛に関して自分勝手に思えたのだと思う。
だいたい、自分の恋が思い通りにいかないからって、
自分の死をちらつかせて相手を脅迫するのはちょっとなぁ・・・。
コゼットにはどうしようもないではないか。

また、エポニーヌに対してやたら冷たいのもマイナスだ。
恋愛の盲目状態のときは周囲には目はいかないものだから
それほど責められないのかもしれないが、
エポニーヌのけなげさとその悲しい結末と、マリユスの向こう見ずで強引な恋とを
どうしても対比してしまい、彼の恋の自分勝手さが目だって浮き上がってしまった。
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by komuro-1979 | 2005-12-07 13:57 | フランスの小説

「レ・ミゼラブル(三)」 ユゴー 新潮文庫

ヴァルジャンは逃亡の身なのに、やってることが軽率な気がする。
自分からピンチを招いているとしか思えない。
そして、ジャベールは神出鬼没だなぁ(笑)
絶妙のタイミングで登場するも、必ずヴァルジャンを取り逃がす。
まるでルパン三世の銭形警部だ(キャラはまったく違うけど)。
こういうところはちょっとご都合主義的な感じもするけど、
とにかく面白いので文句がつけられない。

あと、マリユスが公園のベンチで拾ったハンカチのエピソードは爆笑ものだった。
ヴァルジャンは一時は聖人のようだったのに、
コゼットのこととなると、完全に普通の人になってしまうのが
ほほえましかった。

ただ、相変わらず余談が長いなぁ・・・。
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by komuro-1979 | 2005-12-04 11:59 | フランスの小説