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「レ・ミゼラブル(二)」 ユゴー 新潮文庫

面白い!
ヴァルジャンとコゼットの逃亡のシーンはすごいスリル感がある。
読んでるとき、そのスリルにドキドキする自分の心臓の鼓動が聞こえてくるようだった。

ストーリーは手放しで面白いのだけれど、大きな不満が・・・。
なんでストーリーとほとんど関係ない話(余談?)がこんなにも長すぎるのだろう?
ナポレオン戦争や修道院の話なんてちょっと触れれば済むことなのに、
両者あわせて140ページ近くも使う理由がまったく分からない。
ストーリの先が知りたくてウズウズしている人にとって、
こんな長い余談を延々と読むことなど単なる苦痛に過ぎない。
しかも一番の問題は、この長い余談を読んでもたいして面白くないということだ。

作者は一体何を考えているのだろうか・・・?
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by komuro-1979 | 2005-11-29 23:28 | フランスの小説

「レ・ミゼラブル(一)」 ユゴー 新潮文庫

(あらすじ)
わずか一斤のパンを盗んだために19年の獄中生活を送ることになった男、
ジャン・ヴァルジャンの物語(全五巻)。一巻ではヴァルジャンが出獄し、名を変えて、
社会で成功を治める。しかし、それは長くは続かなかった・・・。

途中までかなり退屈だった。
司教の善行の部分は宗教色が強くてややウンザリだったし、
ファンチーヌの登場のくだりも、男たちのキザっぷりが目についただけだった。
しかし、マドレーヌが登場するあたりから、一気に面白くなる。

マドレーヌ(ヴァルジャン)のこれまでの人生の歩みと、
その後改心した彼の様子とを対比によって、犯罪者というものはあくまで環境
(例えば経済状況、過酷な刑事司法制度、犯罪者に対する人の目)が作り出すのであり、
彼らは犯罪を犯したくて犯すのではなく、犯さざるを得なかったという場合があるということが
とてもよく分かった。あれでは誰だって犯罪者になってしまう。

ただ、人はあれほどまでに変われるものなのだろうか?やや、やりすぎ感があった。

圧巻だったのは、マドレーヌが良心の呵責に苛まれるシーン。
人が善行を行うか、悪行を行って自己保身を図るかのジレンマに陥ったときに、
頭の中で天使が善行を薦め、悪魔が悪行をそそのかす・・・といった、
使い古されたイメージがある。
マドレーヌの頭の中でのこの天使と悪魔の戦いは、死闘と呼ぶにふさわしい、
すさまじいものだった。
彼が苦悶する様子と、裁判での告白のシーンは、
どこか宗教的な神々しさのようなものさえ感じさせる。
すばらしい心理描写。読んでて感動した。

宗教色の強い小説はあまり好きではないのだけれど、
この小説は、そういう好きとか嫌いとかいう次元を超越して面白い。
次の巻を読むのが非常に楽しみだ。
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by komuro-1979 | 2005-11-29 01:36 | フランスの小説

「そうだったのか!現代史」 池上 彰 ホーム社

世界(現代)史の本。著者はNHKの「週間こどもニュース」でおなじみの池上彰さん。
この本は誰もが知っている比較的最近に起こった18の重大事件を扱っている
(目次を下に挙げておきます)。

これらの事件の説明を、単なる事実の羅列ではなく、
歴史的流れの中に位置づけ、ストーリー性をもたせて説明するために、
事件の原因と経緯がかなり理解しやすいものになっている。

また、「社会主義」などの難しい言葉を、簡単な言葉でわかりやすく説明している上に、
読者の興味を引くように、ところどころで小ネタ、たとえば
スターリンの独裁者ぶりを示すエピソードなどをたくさん盛り込んでいるため、
すらすら読めて、しかも飽きない。まるで歴史小説を読んでるようだ。

学生時代、教科書で学ぶ世界史の授業はあまりに退屈で、
僕にとってはもっぱら睡眠の時間だった。
教科書みたいなあんな無味乾燥なものではなく、
この本みたいな読者の興味をそそる本を使った授業だったら、
きっと世界史が大好きになっただろうにと思った。

<オススメ度>★★★★★


(目次)

冷戦が終わって起きた「湾岸戦争」
冷戦が始まった
ドイツが東西に分割された
ソ連国内で信じられないことが―スターリン批判
中国と台湾はなぜ対立する?
同じ民族が殺し合った―朝鮮戦争
イスラエルが生まれ、戦争が始まった
世界は核戦争の縁に立った―キューバ危機
「文化大革命」という壮大な権力闘争
アジアの泥沼―「ベトナム戦争」
ポル・ポトという悪夢
「ソ連」という国がなくなった
「電波」が国境を越えた!「ベルリンの壁」崩壊
天安門広場が血に染まった
お金が「商品」になった
石油が「武器」になった
「ひとつのヨーロッパ」への夢
冷戦が終って始まった戦争 旧ユーゴ紛争
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by komuro-1979 | 2005-11-28 18:08 | 小説以外の本

「永遠の夫」 ドストエフスキー 新潮文庫

(あらすじ)
妻がつぎつぎに愛人を替えていく中、夫という位置にしがみつくことしかできない男トルソーツキイ。妻の死後、彼はかつて妻の愛人であった主人公の下に現れ、理解不能な言動を繰り返す・・・。

トルソーツキイの、主人公に対する復讐心と尊敬の心。
この矛盾する心のせめぎあいが、彼の意味不明な言動となって表出する。
最初はその言動のあまりの突拍子のなさに、ただただ滑稽だと感じたのだけれど、
だんだんと痛々しく思えてきて、最後には憐憫の情さえ感じてしまう。
人間の感情とそれに基づく行動は、時として理性を裏切り、前後に矛盾する。
それをここまで狂気的に描けるのは、すごいと思った。

ただ、ラストは、お互い「抱き合って、泣」いて欲しかったかなぁ・・・(笑)

<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-11-28 01:43 | ロシアの小説

「伝わる・揺さぶる!文章を書く」 山田ズーニー 新潮文庫

相手の心に訴えかける、説得力のある文章を書くにはどうすればいいか、
そのヒントを与えてくれる本。
本の前半部分では、すべての文章に共通する、
文書作成の際に考慮しなければならない判断要素を示し、
後半部分ではそれを用いて、日常生活で登場する各形式の文章、
例えば、上司を説得する文章、相手にお願いする文章、お詫びの文章などを、
説得的に書くコツを示している。

これはとてもいい本だと思う。
普段、何も考えず適当に文章を書いていると、
いざ、文章で相手を説得しなくてはならない状況になったときに、
うまい書き方が分からず途方に暮れてしまう。
この本は、そういうときに威力を発揮し、
説得的で相手の心に訴えかける文章を書くために必要な思考のプロセスを、
具体例を用いながら丁寧に教示してくれるので、
この本を言うことを守りつつ文章を書けば、かなり説得的な文章になるだろうと思う。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-11-27 19:54 | 小説以外の本

「ほんとうの敬語」 萩野貞樹 PHP新書

敬語っていつちゃんと習ったのだろう?小中学校あたりで習ったのかな?
敬語には尊敬語、謙譲語、丁寧語の3つからなるということ自体忘れていた僕にとって、
この本は自分の敬語の使い方を見直すとてもいいきっかけになった。

この本はまず始めに尊敬語、謙譲語、丁寧語の定義をきちっと示し、
その後の説明もその定義から論理一環して説明しているので、
非常に分かりやすく説得力がある。

中でもすばらしいのは、各敬語の関係を示した図。
著者自身、自画自賛しているが、これが一読了解でほんとに分かりやすいのだ。
日常生活で敬語を使う場面で、この図を頭の中で描けば、
使う敬語の種類を間違うことはないように思う。

著者は、巷に溢れる他の敬語指南本や、国語辞書が
いかに嘘ばかり書いているかということを、辛らつな表現を用いて攻撃する。
他の敬語関連本を読むのが怖くなってくるくらいだ。
ここで、果たして著者がいうことが正しいのか、それとも他の本の言うことが正しいのか
という疑問が生まれるのだけれど、先も言ったとおり著者の主張は論理一貫していて
納得できるものであったので、僕個人的にはおそらく他の本が間違っているのだろうと
結論付けた。

・・・
簡単な言葉で分かりやすく書かれているので、肩肘張らずに敬語の勉強ができます。
敬語に自信のない方、改めて勉強してみたい方、ぜひ読んでみてください。

<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-11-23 19:06 | 小説以外の本

「ハツカネズミと人間」 スタインベック 新潮文庫

(あらすじ)
体は小さいけれど頭はきれるジョージと、体がでかくて力も強いが、頭は弱いレニー。
二人は渡り労働者であるが、将来は自分の家と土地をもって、豊かな暮らしをすることを夢見る。そんな彼らが、今回たどり着いたある農場で事件を起こす・・・。

自分の土地を持つなどといった夢を抱きつつ、
日々の辛い生活を乗り切る貧しい渡り労働者たち。
しかし、彼らは本心ではそんな夢は実現するとは思っていない。
夢をみることは自分の心を慰める単なる娯楽のようなものにすぎず、
現実は日々の食にありつくのに精一杯で、この生活から脱する手段などありはしないのだ。
小説を読んでいると、そういう彼らの作り出す、あきらめムードのただようけだるい雰囲気が
重くのしかかってくる。

「もしかしたら、いまの辛い生活を抜け出して、夢をかなえることができるかもしれない」
そういう期待にとらわれたときの高揚感と、それが「事件」によってかなわなくなったときの失望感・・・。それがキャンディの涙とレニーの結末によって、とてもよく伝わってきた。
特に、レニーはあれだけ純粋に自分の夢の実現を楽しみにしていたのに、
それがあんな形で無残に打ち砕かれるのは、なんともやるせなかった。

・・・
薄いながらも(148頁)、よくまとまった小説だと思いました。
スタインベックの小説は「怒りの葡萄」も読んだけど、
こちらのほうが読みやすくてオススメです。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-11-20 19:00 | アメリカの小説

「青春は美わし」 ヘッセ 新潮文庫

「青春は美わし」と「ラテン語学校生」という2つの短編が収録されている。
2つ合わせても115Pしかないので、すぐに読み終わってしまった。

どちらも青春時代の恋愛を描いているのだけれど、
「青春は美わし」のほうは、これに加えて都会の人間が理想とするような故郷、
具体的には、美しい自然と、子供のころから変わっていない風景があり、
家に帰ると少し老けた思慮深い両親と、相変わらず騒がしい弟たちが出迎えてくれる。
少し近所を歩くと、成長した友人たちと、初恋の相手であったあの子との
懐かしい出会いがある。
そこでは都会とは違って、時間はゆっくりと流れ、しばらく滞在していると、
子供時代にかえったような、純真な気持ちになれる・・・。
そんな風な理想の故郷が、見事に表現されている。
そんな美しい故郷と、青春の甘酸っぱい恋愛とが、非常にうまく結びついていて、
読んでいると、まるで幻想的で美しい夢をみているような、
なんとも言えない不思議な気持ちになってしまう。

読後感は最高でした。超オススメです。


<オススメ度>「青春は美わし」★★★★★  「ラテン語学校生」★★★★
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by komuro-1979 | 2005-11-19 02:12 | ドイツの小説

「女ごころ」 モーム 新潮文庫

若くて美しい未亡人である主人公メアリイと、
彼女に思いを寄せる3人の男の物語。164ページの薄い本。

面白いことは面白いのだが、
メアリイとエドガーのあまりの馬鹿さ加減が腹立たしく、読んでてイライラしてしまった。
メアリイが愚か者であることは言うまでもないが、エドガーも馬鹿でむかつく。
今のありのままのメアリイを見ようとせず、
幼いころのままの純潔で純真なメアリイという幻想を持ち続け、
それを愛するというのは、メアリイにとって失礼だと思う。
そして、メアリイの愚行が発覚したときに、
彼女に「お前みたいな女とは結婚できない」と言ってさっさと立ち去ればいいのに、
悲惨な境遇に陥る自分に酔うために結婚しようとするなんて・・・。
ただただ呆れるしかない。

この小説を読んだ女性の方はどんな感想を抱くのだろう?
それがすごく気になる。
メアリイの、あのあまりにも愚かな考え方と行動については、
弁解の余地がないという点で自分と一致すると思うけど、
細かい点でのメアリイ評がズレる気がする。
そしてやっぱり、エドガーではなく、ロウリイのような男のほうが
魅力的に映るのものだろうか・・・?


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-11-17 16:43 | イギリスの小説

「魔の山(下)」 トーマス・マン 新潮文庫

ようやく読み終わった。ほんとに時間がかかった。
この小説はもともと全般的に難しいが、
下巻に入り、ナフタとセテムブリーニとの間の議論の場面で、その難しさは頂点に達した。
あれを理解するには、ヨーロッパの思想史?もしくは哲学史?などの専門的知識が
必要なのではないだろうか(正直、どんな知識が必要なのかさえ分からなかった)。

前回の上巻の感想から、難しい難しいと連呼しているけど、挫折することもなく、
最後まで飽きずに楽しく読めた。

その理由として考えられるのは、まず、この小説で扱うテーマの豊富さにあると思う。
これらのテーマの中には、時間論や音楽論など、自分の興味のあるテーマがたくさんあり、
その部分を読んで主人公と共に考えを深めるという楽しさがあった。

次に、主人公がいろいろな人間と出会い、恋愛をし、考え方を変化させていくという、
ストーリーそれ自体の面白さがあると思う。
主人公は、最初あれだけ異常だと感じていたサナトリウムでの生活に次第に順応し、
結局はそこに住み着くまでになり、しまいには、
一般人の感覚からすれば明らかに不自由なそこで生活を「自由」だと思うようになる
その過程に、人間の慣れというものの怖ろしさを感じ、慄然とした。

ただ、ラストはちょっと尻すぼみな気がする。
主人公の目を覚ましたものがアレだとは・・・。
そう感じるのは、やはりアレを実体験したことのないからだろうか?
(ネタばれになってしまうために抽象的ですいません。ぜひ読んでみてください)

・・・
というわけで、分量多いし、哲学チックだし、言ってることが難しいので、
オススメ度は★3つにします。
でも、小説内でなされる議論のすべてが理解困難なほど難しいわけではなく、
また、ストーリーの進展と、これらの議論との関連性が薄い場合が多いので、
ストーリの骨子の部分と自分の関心のある理解可能な議論については熟読し、
他の部分は飛ばして読んでも十分に楽しめるのではないでしょうか。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2005-11-16 16:19 | ドイツの小説