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「夜間飛行」 サン=テグジュペリ

一冊に「夜間飛行」と「南方郵便機」が収録されている。

「夜間飛行」は、郵便飛行業がまだ危険視されていた時代、
それに従事する人々の、仕事にかける想いを描いた物語。

読んで印象に残ったのは、仕事に対する男の美学だ。
主人公リヴィエールは、ほんとは情のある人間なのだが、
仕事ではそれを押し殺し、あくまで冷淡、冷徹で機械的に振舞う。
だけどその態度こそが、郵便飛行という危険な事業からパイロット達の命を守り、
また、事業の成功という目標へ向かう確かな方法だという信念をもっているのだ。
彼のその信念を貫く姿は非常にかっこよかった。

今、仕事上の目標をもっているけど、
自分の信念と現実の障害との間で葛藤している・・・といった状況にある人が読むと
大いに共感できるのではないかと思う。

「南方郵便機」は・・・。
とにかく文章が頭に入りにくい。
よく言えば詩的、悪く言えば気取ったまわりくどい文章。
寝不足の頭で読んだからか、それとも訳文が悪いのか、
もとの文章がそういう文章なのかわからないが、
文章との相性が悪くて四苦八苦。
ストーリーの流れすら満足に追えなかった。
同じ作者の文章なのに、なんでこんな違うんだろう?
挫折寸前になりながらも、なんとか最後まで読んだけど、結局頭に何も残らなかった。
いつか再読しよう・・・。

<オススメ度>「夜間飛行」★★★★★ 「南方郵便機」★★
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by komuro-1979 | 2005-10-31 14:58 | フランスの小説

「田園交響楽」 ジッド 新潮文庫

(あらすじ)
身寄りもなく、盲目で、精神の発達の遅れた少女であったジェルトリュードは、
主人公の牧師に拾われ、その教育を受けて、美しく、純真無垢で、そして知性的に育つ。
しかし、開眼手術のあと、思わぬ悲劇が彼女を襲う・・・。

ジェルトリュードの成長の速度があまりに速すぎる気がしたが、
本が薄く、全体の分量自体が少ないのでしょうがないか。
盲目の彼女がどんどん成長していくストーリ展開は、分かりやすくて面白かったが、
一方で、宗教色の強い部分はわかりにくかった。
(例えば、主人公と息子のジャックとの対立や、聖書の文言解釈など)

主人公が自分の感情や本当の気持ちを、
宗教を理由に誤魔化し続けていくところには反感を持った。
彼にとって宗教は、自分を正当化する手段でしかなかった気がする。
一体、彼に、ジェルトリュードとジャックの恋愛を妨げる、どんな権利があったのだろうか?

しかしそれにしても、主人公がジェルトリュードに対して、
必死で隠そうとしていた「世間の醜さ」というものを、
主人公自身が体現したのが、なんとも皮肉だった。
ジッドの作品は、他にはまだ「狭き門」しか読んでないが、
ジッドは宗教というものに反感をもっているのだろうか?


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-10-29 00:33 | フランスの小説

「狭き門」 ジッド 新潮文庫

(あらすじ)
ジェロームとアリサは互いに愛し合うが、アリサはキリスト教上の信仰心から、
その愛を完全に受け入れることを拒み始め、苦しむようになる・・・。

ジェロームとアリサとの手紙のやりとりが良かった。
ああいう、相手を愛する気持ちを素直にしかも情熱的に告白した文章というものを、
思えばこれまで読んだ事がなかったので、新鮮だったし、どこか羨ましさも感じた。
(ちょっと気恥ずかしかったが・・・)

文章が非常に上手いこともあって、
途中までは物語の世界にぐいぐい引き込まれていったのだが、
アリサがジェロームへの愛と信仰とを天秤にかけるあたりから、
感情移入できなくなってしまった。
キリスト教徒ではない自分にとって、ジェロームへの愛と信仰心との葛藤に悩む
アリサの気持ちはまったく理解できないばかりか、滑稽とさえ感じられてしまったのだ。
果たしてキリスト教徒ならば、アリサの心の葛藤を理解する事ができるのだろうか・・・?

そんなわけで小説の後半はいまいち入り込めなかったが、
ただ、アリサの日記の
「・・・主よ、あなたが示したもうその路は狭いのです・・・二人ならんでは
通れないほど狭いのです」
という一文は、あまりに悲しく、強く心を打つものがあった。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-10-26 22:47 | フランスの小説

お休みします

急用ができたので、少しの間、更新をお休みします。
今月末か、来月のはじめには復活できると思います。
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by komuro-1979 | 2005-10-07 18:53 | 日記

「カンディード 他五篇」 ヴォルテール 岩波文庫

「カンディード」は、「世の中は最善の状態にある」という最善説を信じる、
世間知らずで純真無垢なカンディードが、次々と不幸な出来事に巻き込まれる話。

カンディードとマルチンとの会話のシーンがめちゃくちゃ面白い。
マルチンはカンディードと全く正反対に、
世の中を悲観的に、そして冷笑的にみているのだが、
彼の口から飛び出す皮肉がきつすぎるのだ。

たとえば、

「・・・フランスへいらしたことがありますか」
「州をいくつも歩き回りました。住民の半分が頭のおかしい州があるかと思えば、住人がずる賢すぎる州もいくつかあるし、一般に性質がおとなしくて愚鈍な人間のいる州や、さも洗練されたように振舞う人間のいる州もありますが、どの州でも最大の関心事は恋愛で、第二に人の悪口、第三にばかげた話をすることです」

とか、

「・・・では、いったいこの世界はどんな目的で作られたのでしょう」
「私たちを激怒させるためですよ」

などなど。
文学作品を読んでる途中に思わず吹き出してしまったのは、初めてだ。
作者の皮肉の才能には感心する。

主人公を始めとする登場人物には、災難、それもとんでもなく悲惨な災難が
次々と襲い掛かる。
いたるところで騙され、牢に入れられ、金を盗まれる。
なんて嫌な世の中だろう!
読んでて暗い気分になるところを、ユーモアに溢れた会話が気分をやわらげてくれた。

旅の中で、世の中は醜くて汚いことばかりであることを実感として知ったカンディードは、
はたして最善説を捨てるのだろうか?
そこはぜひ読んでみてください。★×5の超オススメです。

他の五つの作品についても簡単なレビューを。

「ミクロメガス」★★ 
注を読まないとオチが分からなかったのが残念。
哲学について知識がないので、コントの面白みも分からず。

「この世は成り行き任せ」★★★ 
「すべては善ではないにしても、すべてはまずまずだ」という結論には賛成。
                 
「ザディーグまたは運命」★★★★★ 
これは面白い!ストーリーに起伏があり、先が読めない。主人公も魅力的。
老人の突拍子もない行動にはびっくりするよりもまず、笑いがこみ上げてしまった。
ただ、天使の語る最善説には賛成できない。
世の中の現在の不幸をごまかす思想に過ぎない気がする。 

「メムノン」★★★ 
作者の思想的な変化が見られたということ以外には、特に印象に残らなかった。

「スカルマンタドの旅物語」★★★ 
世界中で、いかに愚かなことが原因で争いがおこるかを見せ付けられて、気分が重くなった。
作者がいかに世の中に絶望しているかが伝わってきた。

・・・と、いうわけで、
「カンディード」の他には「ザディーグまたは運命」が面白かった。

これらの全作品について言えるのは、ストーリが面白いかどうかはともかく、
世の中を生きるうえでの機知がたくさん詰まっているということ。
スラスラ読めて、奥が深い。
こういう作品こそ、世の人にもっと読まれるべきだと思います。
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by komuro-1979 | 2005-10-06 03:19 | フランスの小説

「モンテ・クリスト伯(七)」 アレクサンドル・デュマ 岩波文庫

ついに最終巻。
ラストについて書きたいことがあるのだけど、
完全なネタバレになるので、それは下のほうに分けて書きます。

全体の感想としては、
3巻4巻あたりは、ほとんど復讐の準備だけで終わるために、やや退屈だった。
でも復讐が始まる5巻以降の面白さは言葉に言い表せない。
モンテクリスト伯の復讐にかける執念と、
その執念(というか怨念?)が解放されたときのすさまじさは一読の価値ありです。
全七巻と、分量は多いですが、文章が読みやすく、
後半になるにつれて加速度的に面白くなってくるので、
あっという間に読み終わることが出来ると思います。
超オススメです!

(以下、ネタバレ)

ラストはあれでよかったのだろうか?
モンテ・クリスト伯がエデとくっついて、幸せになることを望んではいた。
でも、その通りのラストでよかったと思う気持ちがある反面、
どこか後味の悪さが残る。
あの3人に対する復讐は、決して法に触れるやり方で行われたのではないし、
そもそも彼らは復讐されて当然に思う。
でも、そのために彼らの家族までも犠牲になってしまった。
特に、モンテ・クリスト伯自身、後悔していたが、
何も罪のない子供が犠牲になったのはやり切れない。

また、メルセデスがあまりに不幸で可哀想すぎる。
彼女はダンテスが帰って来るのをずっと待ち、
彼の生存の望みがなくなった段階で、自分の望まない結婚をし、
そして復讐が終わった今、残りの余生を悔恨を抱きながら暮らさねばならない。
これでは、ダンテスが逮捕されたあの日から、ずっと苦しみっぱなしだ。
これほどまでの苦しみを負わされるほどの罪が、彼女にあったのだろうか?

こういった犠牲を払いながらのモンテクリスト伯の幸せとは、一体なんなのだろう?
そもそも、復讐することは正しかったのか?
う~ん・・・。
なんとなくすっきりしなかった。


<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2005-10-01 18:03 | フランスの小説