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「読書について 他二篇」 ショウペンハウエル 岩波文庫

「思索」「著作と文体」「読書について」の3つが収録されている。

思えば最近、本を読むときは、
その本を読むということ、ただそれだけを目標としていた気がする。
とりあえず、「読んだ」という実績が重要で、
その本の内容をちゃんと消化することにあまり目を向けていなかった気がするのだ。

例えば、少し学術的な本を読むときなど、
ただそこに書かれている主張内容を一応理解できればそれで満足して、
それに対して自分の頭の中で批判を加えたり、
他の事例に当てはめるとどうなるだろうか・・・など、
そういう頭脳労働を軽視してしまっていた。というよりめんどくさくて避けていた。
その結果、著者の主張に対する理解は表面的なものになってしまい、応用が効かない。
他人に対し、読んだ本の内容を上手く説明できない。
そしていつの間にか内容を忘れてしまう。
これでは本を読んだ意味はほとんどなくなってしまう。

「読書は他人にものを考えてもらう事である。・・・だから読書の際には、ものを考える苦労はほとんどない。自分で思索する仕事をやめて読書にうつる時、ほっとした気持ちになるのも、
そのためである。・・・ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間はしだいにものを考える力を失っていく。(127頁)」
という指摘は、自分の心に突き刺さるものがあった。

たくさんの本を読むのはいいことだという思い込みがあった自分にとって、
多読の危険を説くこの本は新鮮だった。
全編に渡って著者の毒舌が冴え渡っていて、非常に面白い。
分量がとても少ないながらも、ハッとさせられる記述がたくさんあり、
自分の読書に対するスタンスを再考するいいきっかけになったと思う。

読書が好きな人にぜひともオススメしたい本です。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-07-30 19:47 | 小説以外の本

「荒野のおおかみ」 ヘッセ 新潮文庫

(あらすじ)
自意識過剰で市民生活になじめないハリーが、
不思議な少女ヘルミーネと出会い、自己を解体していくという話。

今まで読んだヘッセの小説とは違って
ファンタジー色が強く、寓話的だった。
観念的、抽象的な記述が多く、はっきり言ってムズイ・・・。
特に「荒野のおおかみについての論文」の部分は
よく分からなくて、頭痛で寝込みそうになった。

全体を通じて寓話的なエピソードがいくつも挿入されていたが、
それらを通じて作者が何をいいたいのか一読しただけでは理解が困難なものが多く、
読むのにとても骨が折れた。
中でも特に、現代文明批判を暗喩するエピソードは分かりにくかった。

ただ、ヘルミーネがハリーの心に土足で入り込んで
ハリーの自己変革を強引に促すところは非常に面白かった。
ハリーはなお自己の殻に閉じこもろうとしてそれに抵抗を示すも、
結局はヘルミーネの手のひらで踊らされる様子は可笑しかった。
しかし僕はそうやって笑いつつも、
ハリーの悩みに共感できる部分があり、彼に自分の姿を重ね合わせていたせいか、
彼の滑稽さが自分の滑稽さでもある気がして少し胸が痛かった。
ヘルミーネのような少女に出会ったハリーを
本気でうらやましいと感じた自分は、もうダメなのかもしれない・・・。


・・・
とても難しい小説だと感じました。
情けないことですが、僕は一度読んだだけではあまり理解できませんでした。
再読するたびに理解が深まり、この小説に対する評価は変わる気がします。
オススメ度は再読するまでの暫定的なものとして、
星3つとしておきたいと思います。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2005-07-28 01:50 | ドイツの小説

「春の嵐」 ヘッセ 新潮文庫

(あらすじ)
少年時代に事故で足が不自由になった
主人公クーンは、一般的な青春を諦めて音楽を志す。
その道で彼は有名なオペラ歌手であるムオトと出会い、不思議な友情が始まる。
クーンの名が世に出始めた頃、気高く美しい女性ゲルトールトと出会い彼女に心をするも、
その恋はムオトとゲルトールトとの結婚という形で幕を閉じる。
絶望に陥ったクーンだが、やがて諦観し、2人の愛を見守ることにする・・・。

事故によって青春の一部が奪われ、
悲しみに沈む主人公の心理描写は胸を打つものがあった。
そのせいか主人公に感情移入してしまい、
彼のその後の成長と成功、そして挫折がまるで自分のことのように感じられ、
先が気になってしょうがなかった。

それにしても、クーンのゲルトールトに対する愛、
ムオトとゲルトールトのお互いに対する愛、どれも非常に困難で苦しい。
それにも関わらず愛することをやめることができずに、
悩んで苦しむ姿は痛々しいものがあった。
ああいう愛は、外から見るとただただ苦しいだけに思えるのだが、
苦しいからこそより一層愛が深まるのだろうか?
そこらへんが自分にはよくわからないところだ。

ヘッセの小説はこの「春の嵐」を含め何冊か読んできたけど、
「車輪の下」以外どれも最高に面白かった。
なぜ面白いと感じるのか考えてみると、
主人公の中に自分の姿を見つけてしまうからだと思う。
というのは、今まで読んだヘッセの小説は
どれも悩みや不安を抱えた主人公の成長の物語だった。
そして彼らの悩みや不安は自分がかつて抱えていたか、
もしくは今現在も抱えているものばかり。
こういったものに対し、主人公はどう向き合い、消化していくのか。
その経過の中に、自分の悩みや不安に向き合うためのヒントが隠されている気がしてしまう。
そんな気持ちで読んでいるから、主人公に当然のように感情移入してしまい、
その結果、物語にぐんぐん引き込まれてしまうのだろう。

悩み多き人間にとって、ヘッセの小説ほど面白いものはない。
これからも読んでいきたいと思う。


<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2005-07-22 00:46 | ドイツの小説

「日はまた昇る」 ヘミングウェイ 新潮文庫

(あらすじ)
戦傷で性行為不能となったジェイクは、奔放な女友達のブレットをはじめとする友人らと共に、
祝祭に沸くスペインのパンプローナへと繰り出し、そこで自堕落な生活を送る・・・。

残念ながら、あまり楽しめなかった。
つまらないとは言わないが、面白さを感じる部分が少なかった。

ジェイクとその仲間たちとのやりとりも、その間に起こる出来事も、
とくに目を引くものがなく、たいした起伏がないので、読んでてダレてしまった。
もちろん、人の日常なんてそんなもので、その点でリアルといえばリアルであるが、
それならそれで、例えばその生活の中で生じる登場人物たちの喜び、悩み、葛藤などを
深い心理描写で魅せてくれるなどしないと、読んでて飽きてしまう。

ただ、闘牛のシーンの描写は非常に迫力があった。
闘牛士と牛との命のやりとりにともなう緊迫感、
闘牛士の華麗な技を楽しみつつも、一方では事故による彼の死をも期待する観客たち・・・。
闘牛はテレビでしか見たことはないが、
テレビで見るよりもよっぽど闘牛の醍醐味と迫力が伝わってきた。

裏表紙には「自堕落な世代の矜持」と書かれているが、
彼らがそれほど自堕落に感じなかったのは、時代のせいかもしれない。
この小説が書かれた当時のアメリカでは、
登場人物たちの生活は新鮮に思えたのかもしれないが、
テレビその他を通じてもっと自堕落な人間達のことを知っている今の自分には
特に感じるものはなかった。
この小説を楽しめなかったのは、そこに原因がある気がした。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2005-07-20 17:47 | アメリカの小説

再開

一冊分更新しました。
これから少しずつのんびり再開していきたいと思います。
これまで通り、海外の文学小説を中心にしつつも、
他分野の本も読んでいけたらなーと思っていますが、
思うだけに終わりそうな予感・・・。
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by komuro-1979 | 2005-07-19 18:02 | 日記

「はつ恋」 ツルゲーネフ 新潮文庫

(あらすじ)
16歳のウラジミールは別荘に滞在中、年上の令嬢ジナイーダと出会い恋に落ちる。
初めての恋であり、片思いであることもあって、
彼は気も狂わんばかりの日々を送るも、その恋は意外な結末を迎える・・・。

初恋の荒々しさ。向こう見ずさ。不安や葛藤。
そして片思いであることの辛さ。
そういうものがほんとに上手く表現されていると思った。
男の恋心をうまく操るジナイーダの一挙手一投足に
心をかき乱されるウラジミールの姿に、いつかの自分の姿を重ね合わせてしまった。

好きになった相手の前では、自分の立場はほんとに弱い。相手の奴隷といってもよい。
相手の何気ない些細な言動に一喜一憂したり、
ささいな表情の変化に疑心暗鬼になり、その奥にある深い意味を見出そうと、
無駄な努力に骨を折る。
好きな人のことを想って勉強や仕事は手につかず、
日常生活は全て好きな人中心で回ってしまう。
でもそれは辛くもあるが、それで充実しているのだ。

そんな自分の恋愛の記憶をウラジミールを通じて思い出し、
物語の後半、大人になって初恋を振り返ったウラジミールと同じく、
なんともいえないほろ苦い気持ちになってしまった。

・・・
というわけで、非常に良く出来た小説だと思います。
分量が少ないし、難解さが全くないので誰にでもオススメできます。
今現在、恋愛中の人は特に感情移入して読むことが出来ると思いますよ~。


<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2005-07-19 17:54 | ロシアの小説