<   2005年 01月 ( 7 )   > この月の画像一覧

「ナナ(上)」 ゾラ 新潮文庫

上巻を読み終わった。
ゾラの小説は「居酒屋」に続き2作品目。

小説の前半から3分の2あたりまでは、あまりに退屈すぎた。
原因としてまず、登場人物が多すぎる。
記憶力の弱い自分の頭の許容量を超えていた。
登場人物たちの人間関係や個性がつかめていないのに、
その中の「誰と誰が不倫している」とか、
「誰が誰を狙っている」とかの話を延々と聞かされても面白いはずがなく、
ただただ眠かった。途中からほとんど斜め読み。
終盤に入るまで、たいした出来事も無く、
こういったどうでもいい話ばかり繰り返される。
上流階級の人間たちのしょうもなさを強調しているのだろうけど、
面白く感じないので、ただただうんざりした。
肝心のナナは登場シーンこそ派手だったが、
中盤までは主人公のわりに影が薄い気がした。

中盤から終盤にかけて、
ようやく登場人物たちが重要人物と脇役に別れてくるので、
メリハリがつくようになった。
そしてナナとその取り巻きたちのとの駆け引きが露骨になって、
だんだんと面白くなってくる。
ナナもいよいよその無邪気な小悪魔ぶりを発揮し始めた。
ここでは特に、恋愛経験の乏しい初老の男ミュファの堕落ぶりが印象に残った。
彼はナナによって、自分の心の奥底に眠っていた性的欲望を呼び起こされ、
ナナに入れ込むようになる。そしてナナに利用された挙句、捨てられる。
自分の良心と欲望との葛藤が非常にうまく描けているので説得力があり、
その実直で善良な人間性がナナによって破壊され、
落ちるところまで落ちていく様子はとても迫力があった。

「面白くなってきたー!!」と思ったところで上巻は終わった。
[PR]
by komuro-1979 | 2005-01-29 01:29 | フランスの小説

「クヌルプ」 ヘッセ 新潮文庫

定職につかず、各地を放浪するも、
その性格から行く先々で歓迎された、クヌルプの生涯を描いた作品。
125ページの短い小説だけど、すごく心に残った。

クヌルプは各地を放浪して、
仕事と家族を持ち日々の生活に追われている人々に癒しを与えつつも、
そのような人々の生き方を心の中では軽蔑する。
そして生涯、自由気ままで詩的な生き方を貫くのだが、
その楽しげで気楽そうな外面に反し、胸の中ではずっと孤独を感じていたという。
小説中の「クヌルプの思い出」の章で、
彼の胸に巣食うその孤独の一端が垣間見える。
僕は、この小説も「デミアン」と同じく、
人は本来孤独であり、それに耐えて生きていかなくてはならないということが
主要なテーマの一つなんだろうなと感じた。

また、歳をとったクヌルプは、
今までの自分の安定しない、軽薄ともいえる生活を振り返り、
自分の人生は無意味だった後悔する。
しかし最後の最後、
そういう生き方したことを神との対話によって受け入れる。
そこに作者の、自分らしい生き方を貫く者に対する
エールのようなものがこめられているように感じた。
「デミアン」では作者の言う「孤独」の辛さ、重さが強調され、
読み終わった後に気分が沈んだのと違い、
今回は読後感がとても良かった。

・・・
オススメ度は星5つ!
これまで読んだヘッセの小説と同じく、
自分というものを見つめるのにいい小説。
内容面の良さもさることながら、
文章の流れがよく、とても美しいと感じました。
自然描写もとても上手くて、
頭の中で美しい情景が次々と浮かんでくるようです。

とてもオススメ。
ぜひ読んでみてください。


<オススメ度>★★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-01-21 17:24 | ドイツの小説

「地下室の手記」 ドストエフスキー 新潮文庫

極端な自意識過剰から一般社会との関係を絶ち、
地下室に籠もった官吏の手記という形式をとった小説。
2部構成で、1部は人間の本性は非合理だということが主人公の口を通して延々と語られ、
2部は主人公の若かりし頃のエピソードとなっている。

読み始めてまず、主人公の強烈な個性に圧倒される。
自負心、虚栄心の固まりのような男。
そして小心者で自虐的。気分屋で激情家。空想癖もある。
そのうえ皮肉屋で毒舌で説教好きときている。
こんな奴とは絶対に友達になれない(笑)
手のつけられない男だ。

だけど、決して嫌悪感は抱かなかった。
というのは、この主人公の中に自分を見出す事が多分にあって、
良くも悪くも親近感を感じてしまったからだと思う。
世間とうまく折り合いのつけられないこの主人公の心理に共感する部分があり、
また、そのどうしようもない性格の一部が自分の中にもあることを認めざるを得ないのだ。

第1部では、こんな非合理の固まりのような男が
人間の本性は非合理である事を語りまくる。
その毒舌っぷりはすさまじい。ひたすら圧倒される。

そして第2部。
この主人公に関するエピソードなのだから、
読む前から、毒にまみれ、醜悪で、暗い話なんだろうなぁと予測はつく。
・・・実際、その通りなのだが、「醜悪」と一言で片付けられないものがある。
誰もが持ちうる負の感情(それも最底辺の感情)の発現であり、
読者はそれと向き合う事を強制されるのだ。
人によっては、自分の中に眠っていた醜悪なものを直視させられて
気分が悪くなってしまうのではないか?とさえ感じた。
それもこれも、人間の負の感情を直視しそれを表現する、
作者の人間観察力と描写力があってのこと。
その技術はもはや神の域に達していると思ったり。

・・・
結論として、非常に面白かったです。
個人的には「罪と罰」に匹敵するぐらいの面白さがあると思いました。
文章も読みやすく、薄いので、
ドストエフスキー入門に適しているのではないでしょうか。
ただ、この小説の持つ「毒」はすごいものがあり、
万人にオススメというわけではありませんが・・・。


<オススメ度>★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-01-18 18:20 | ロシアの小説

「デミアン」 ヘッセ 新潮文庫

主人公シンクレールが、年長の友達デミアンをはじめ様々な人物と出会い、
自我を形成していくという話。

文章に翻訳文独特の読みにくさを感じた。
でも小説の前半、シンクレールが幼少時代に体験した出来事とそれに伴う感情は、
僕自身も体験したものなので、そこは理解が容易だった。
例えば、辛い学校生活と、善良で温かい家族に囲まれた家庭生活との
落差に対する苦しみは、幼いころの僕もなんとなく感じていた。
作者の的確な心理描写によって、
そのような漠然とした感情がはっきりした形に炙り出されるので、
読んでてその当時の記憶と感情が生々しくよみがえり胸が苦しくなった。

後半は難しかった。半分お手上げ。
シンクレールがようやく自分の人生の指針のようなものを見つけるのだけど、
それがかなり抽象的・哲学的で分かりにくかった。
特に「自分の運命を見出す」というようなフレーズが何度も出てくるが、
ここでいう「運命」とは何かがつかめなかったのが痛い。
自分の本当の心・欲求に従った生きかた(目標?)のようなものが「運命」でいいのかな?
それを前提に自分なりに作者の言いたかったこと(=シンクレールの到達点)を
解釈してみると、

「人は自分の運命を見出し、周囲の人間や出来事に惑わされず、
 ひたすら自分の運命に従って生きる事が必要。
 その運命は決して他者から与えられるものではなく自己固有のものであり、
 そうであるがゆえに他者は手本にならないから、運命を生きる人はいつも孤独。
 だけどその孤独に耐えて生きてゆくべきだ」

ということになりそうだが、これはとても厳しい。
運命を生きることの難しさと孤独さは、
運命を生きる人であるシンクレールやデミアンによってある程度推察できるのだが、
僕には耐えられそうもないと思った。

・・・
哲学的で難しいですが、
この小説に真剣に向き合えば向き合うほど
読んで得られるものは大きいと思います。
ぜひ読んでみてください。

<オススメ度>★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-01-15 01:58 | ドイツの小説

「偶然の音楽」 ポール・オースター 新潮文庫

小説の前半は主にストーリー展開の面白さが目立つ。
妻に去られたナッシュが突如遺産相続によって多額のお金を得る。
自暴自棄になっていた彼はそのお金に頼り、仕事も家族も全て捨て、
車でアメリカ全土を無目的に回りはじめる。
お金が尽きかけたところで、ポッツイという博打師と偶然出会い、
ある金持ちをポーカーでカモにしようとタッグを組む・・・。

偶然と、登場人物の中に突如にわきあがる感情に動かされて
物語が進んでいくために先が見えず、
次に何が起こるんだろう?という期待感に突き動かされながら
次々とページを繰ってしまう。

後半はナッシュとポッツィの心理描写が面白い。
理不尽で全く無意味とも思える仕事を強制され、
そこから逃げるすべはない状態。
2人に課せられた仕事の理不尽さと過酷さと言ったらない。
そして監視する人間側の得体の知れなさがなんとも不気味だ。
物語はここで動から静へと変化する。
生活を続ける中で2人の心理はどう動いていくのか。
1人は無意味な作業の中にある種の心の安らぎを見出し、
もう1人は理不尽さ・無意味さに押しつぶされそうになる。
正反対の心理経過を辿るその様子が非常に面白かった。

そして、2人心理状態の格差が極限にまで達した時に物語はまた動き出していく。
あとは結末まで一直線。
その結末自体は情報量が少なくやや残念に感じたが、
全体を通して、いい作品を読んだという満足感があった。


<オススメ度>★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-01-09 18:27 | アメリカの小説

「シッダールタ」 ヘッセ 新潮文庫

無事に免許をとれたことだし、気持ち良く新年一発目の感想を。

最初、インド仏教の用語がたくさん出てきて面食らったが、
注もついているし、最後まで読み通すのに特別な宗教知識は要らず、問題なく読めた。

この小説は、シッダールタが悟りに到達するまでの葛藤と、
それを克服していく過程が詳しく描かれており、
記述の中心は心理描写となる。
シッダールタの感じた心の乾き、焦燥、堕落、絶望。
そして悟りへと向かう心情の変化が非常に上手く描けていて、
まるでシッダールタと共に悟りとは何かと苦悩し、探求している気分になる。

また、カマーラの飼っている小鳥にシッダールタの心理状況を暗喩させたり、
別の道を歩んだかつての友と何度も再会させて
シッダールタの心理変化を際立たせたりするなど、
小説の構成も非常に上手いと思った。

シッダールタの到達した悟りの境地は凡人には理解が難しいが、興味深くはある。
この「悟り」がインド仏教哲学の中でどのような位置付けにあるのか、
そういうことが分かれば一層楽しめたのに残念だと思った。

・・・
159頁と薄いけど、非常に中身の濃い骨太の小説。
ひたすら内省的かつ哲学的なので、
合わない人は合わないとは思うけど、
ぜひ手にとって読んで欲しいと思います。


<オススメ度>★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-01-05 12:16 | ドイツの小説

免許の失効

明けましておめでとうございます~!
去年の12月あたりからブログの更新があまりできなくなってますが、
夏頃までこの状態が続くと思います。
忙しくてなかなか更新できないのです。申し訳ありません。

・・・突然ですが、
みなさんの運転免許の更新期限は大丈夫でしょうか?
僕は2週間ほど前、身分証明のために免許を提示した際に
免許証をなにげな~く眺めてみたら、
更新期限を11ヶ月もオーバーしていたことに気づきました。
そう。失効です。大マヌケにも免許を失効させてしまったのです。
引越しの際に免許の住所を変更していないと、
更新のお知らせが届かないなんて知りませんでした。

その後の手続きはどうなるのかと言うと、
更新期限切れ6ヶ月以上1年未満の人は仮免はもらえるのですが、
本免学科と技能は受けなおしなのです。

家族や友人達に馬鹿にされながら教習所に通う屈辱の日々。
そしてまさかの学科落ち(2度目に合格)。
ついでに技能も落ちました(4日に再試験)。
周囲からの侮蔑はいつしか罵倒に変わり、精神的にかなり落ち込みました。
学科に落ちたときは、家に帰らずこのまま旅に出ようかと思いましたよ。
お金と時間とプライドを無駄にすり減らす日々。正直キツイです。

みなさんも更新期限にはくれぐれも注意してくださいね。
(「更新忘れるなんてマヌケはお前だけだよ」という言葉が聞こえてきそうですが(笑))
[PR]
by komuro-1979 | 2005-01-01 19:53 | 日記