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「復活(上)」 トルストイ 新潮文庫

「復活」の上巻を読み終わった。
長編小説はもう嫌だといいつつも、長編小説を手にしてしまうのは何でだろう???

ネフリュ―ドフに弄ばれた挙句に無残に捨てられ、
それが原因ですっかり堕落してしまったカチューシャの境遇に
すっかり同情してしまった。
ネフリュ―ドフの身勝手さ、無神経さには腹立たしいが、
こういった人間は今も昔も世の中にいくらでもいそうだなぁ。

彼はカチューシャと再会したのがきっかけで、
昔の純粋で善良な自分の本性を取り戻し、
カチューシャに対する罪を償おうと奔走する。
善良な自己を取り戻したことによって急に見えるようになった
都会生活の嘘や欺瞞が次々と描写されるのだが、
それが皮肉に満ちていて面白い。
刑務所での礼拝についての皮肉は秀逸で、思わず笑ってしまった。

ただ、彼はこれから生きにくいだろうなぁ・・・。
貴族生活、都会生活と彼の善良な本性との両立はほとんど不可能に思える。
ラストはすべての財産を放棄し、カチューシャと山にこもって
自給自足の生活でもするのだろうか・・・?

この小説はストーリーが分かりやすく、
色々なところで著者の哲学が語られるも、それをそれほど前面に押し出していない。
(いくら著者の哲学に共感できても、そればかりでは退屈する)
また、登場人物がコミカルに描かれていて親しみやすい。
そして翻訳文が読みやすい事もあり、結果としてスラスラ読めるのがいいね。

上巻では話があまり進まないせいもあり、やや盛り上がりに欠けたが、
下巻に期待がもてるストーリー展開だ。
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by komuro-1979 | 2004-10-31 03:34 | ロシアの小説

「若きウェルテルの悩み」 ゲーテ 新潮文庫

昨日と今日で「若きウェルテルの悩み」を読んだ。
213P。このくらい薄いと読むのが楽でいいなぁ。

あらすじは、主人公ウェルテルが人妻であるロッテに恋するが、
適わぬ恋ゆえに苦しみ、自殺するという内容。

感想は・・・。
う~ん・・・。
正直いまいちだった。

物語の大半はウェルテルのロッテに対する恋の苦しみの描写で占められるのだが、
それに飽き飽きしてしまった。
ウェルテルが女々しすぎる気がして好きになれない。

特に、ラストが気に食わなかった。
自殺するのは勝手だが、人に迷惑をかけすぎだ。
彼は死ねば苦しみから解放されるだろうが、
ロッテはこれから一生、苦しみを背負っていかねばならない。
アルベルトとの夫婦仲も破綻の危機に瀕するだろう。

要するに彼は自己中なのだ。
ロッテを愛していると言っておきながら、
ロッテの幸福や苦しみについてこれっぽっちも考えていない。
自分の愛さえ満たされればそれで良いのだ。
自分勝手な愛。
こういう人は好きになれない。

まぁでも、僕も恋人がいる人を好きになったことがあり、
その点でいろいろ共感できる部分があったことは事実。
それでもウェルテルに感情移入できなかったのは、
ひょっとしたら彼ほど深く人を愛さなかったからかもしれない。

・・・
オススメ度は星3つ。
この小説はウェルテルに感情移入できるかにかかっている。
もしこの小説を読む人が、現在、
このウェルテルと同じように既婚者を好きになってしまったり、
もしくは恋人のいる人を好きになってしまったりして
心の底から苦しんでいる状況にある(もしくはそういう経験がある)のならば、
ウェルテルの心理描写の中から自分の今の苦しみを上手く表現している
箇所を見つけ共感し、多少なりとも慰められるかもしれない。
そしてウェルテルの行動と下した決断に涙するかもしれない。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2004-10-28 14:15 | ドイツの小説

「白痴(下)」 ドストエフスキー 新潮文庫

ようやく「白痴」を読み終わった。
長かったぁ~。
長編小説はしばらく避けたい気分。疲れるから。

上巻の感想では主人公に比べ周辺人物の印象が薄いと書いたけど、
下巻ではむしろ周辺人物の方が強烈な個性を発揮していた。
特にイポリート。
彼の「弁明」は強烈だった。
死を間近に控えた者の苦しみ、悲しみ、怒りが見事に描写されており、
有無を言わさぬ迫力があった。
彼に同情し哀れみを感じざるを得なかった。
でも作者はこの「弁明」の後、イポリートに滑稽な役を演じさせ、みなに嘲笑させる。
それがいかにもドストエフスキーらしいと思った。

作者の作品に流れる「暗さ」はすごいものがある。
イポリートの「弁明」の中の思考の暗さもそうだが、
イポリートとガヴリーラのやりとりもすごい。
まず作者は凡人論を展開する。
これを簡単に紹介すると、
凡人には2種類あってそのうちの「聡明な凡人」は、
自分に何か才能があると想像しつつも、やはり心のどこかでは自分が凡人であるという事に気がついてしまい、そうであるが故に自分に失望し苛立ち苦しむというものだ。
そしてガヴリーラがまさにその「聡明な凡人」であることを指摘したうえで、
イポリートに彼を侮辱させる。
その言葉が非常に痛烈なのだ。

「・・・あなたが最も傲慢な、もっとも自惚れた、最も俗悪で唾棄すべき凡庸性の典型であり、
権化であり、象徴であるからにすぎません。あなたは高慢な凡庸です。いや、すこしもみずからを疑うことのない、泰然自若たる凡庸です!あなたは月並み中の月並みです。自分自身の思想なんてものはこれっぽっちも、あなたの頭脳にも感情にも、決して宿ることのできないように運命付けらているのです。・・・」(364P)

このあともイポリートの侮辱は続く・・・。
・・・すごいねこれは。暗い。暗すぎる。
立派な人間になりたいと望むものに対して、
これほどの精神攻撃はないのではないだろうか。
ドストエフスキーは人の心の奥底に眠るその人の人格の核みたいなものを、
鋭い描写力をもって白日のもとにさらけ出し、そのうえでそれを思いっきり罵倒し辱める。
そういったことをよくやる気がする。
それを読むことを期待して僕はこの本をとったわけだが、まさに期待通りだった。

物語は結局悲劇的な結末を迎える。
後半にナスターシャが舞台に再登場したあたりから、それは予想していた。
彼女のこれまでの言動や性格から、絶対に公爵を苦しめると思っていた。
アグラーヤとナスターシャの対面の場面は、
あまりの緊迫感と、予感される悲劇に、読んでて緊張した。

・・・
オススメ度だけど、感想に書いたような部分は非常に面白く読めたが、
途中読んでて退屈なところが多々あった。
全体としては星3つとしておきます。

<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2004-10-26 18:20 | ロシアの小説

「白痴(上)」 ドストエフスキー 新潮文庫 ②

「白痴」の上巻を読み終わった。

感想としては、う~ん・・・。
ところどころ興味を引くところはあるが、
全般的にはそれほど面白くない。普通だ。

「罪と罰」のように、僕の心の奥を突き刺すような、
暗くて鋭い心理描写があまりなかったのが残念だ。
また、登場人物たちの会話が長く、訳文もやや読みにくく感じるため、
今起こっている事件の概要や会話のテーマがつかみづらいと感じた。
集中して読まないとすぐ置いていかれてしまう。

今回読んでて印象に残ったのは、ブルドフスキーの事件だ。
周りの人間が純朴で母親想いのブルドフスキーを、
(主人公の)遺産問題における被害者として担ぎだす。
周りの人間はブルドフスキーのことを想っているようで実は
自分の正義心や道徳心を満足させたいだけなのだ。
そして彼らは「正義・道徳」という旗印を掲げることによって
自分達が正しいと盲目的に思い込み、周りが見えなくなる。
そしていつしか最低限の慎みを忘れ、周囲の人間、果ては被害者まで傷つけてしまうのだ。

結局、この「正義と道徳」の下になされた一連の騒動は、
ブルドフスキー恥をかかせ、その高潔な魂を傷つけただけに終わった。
皮肉だった。

でもこういう余計で恥ずべきおせっかい(大げさに言えば市民運動)みたいなものは、
現代社会にもあるような気がする。すこし気が重くなった。
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by komuro-1979 | 2004-10-22 02:06 | ロシアの小説

初めてのスタジアムでの観戦

昨日(17日)はJリーグの浦和レッズ対横浜マリノス戦を
埼玉スタジアムにまで見に行った。

やはりスタジアムで実際に見るのと、テレビで見るのとではまるで違う。
応援するサポーターの声と熱気は、テレビでは決して味わえない。
約5万8千人の観客、サポーターたちの歓声。
それはまるで彼らの間から強烈なエネルギーが放出されて、空気を伝わり、
僕の皮膚を突き抜けて体の奥底をゆさぶるようだ。
すばらしい体験だった。

試合は0-0のスコアレスドロー。
両チームの力は拮抗し、手に汗握る試合展開だった。
お互い決定機を何度か作ったが、つめの部分が甘く、
またはバーに嫌われ、ゴールを割る事は出来なかった。

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左は試合直前の練習風景。
右は熱狂的なレッズサポーターたち。
(携帯電話で撮った写真なので、不鮮明ですね。すいません。)
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by komuro-1979 | 2004-10-19 04:02 | 日記

「白痴(上)」 ドストエフスキー 新潮文庫

現在423ページ。

「罪と罰」を読んだ時から、あのような人間の弱さと狂気を直視した、
暗くて陰鬱な物語を読みたいという欲求を持っていた。
「白痴」というバリバリの放送禁止用語が使われた題名のこの本ならば
自分の欲求を満たしてくれるのではないか。
単純にそう思ったのだ。
・・・だけど、今のところは全然暗くない。
そしてここまでのところ、全般的にやや退屈気味だ。

その原因は主人公ムシュイキンとナスターシャ以外の人物が普通過ぎることにあると思った。
まだ序盤だからなのか物語はこの2人以外の、
いわば脇役たちの家庭事情や事件を中心に進んでいく。
これらの脇役たちが2人に比べて普通すぎてあまり関心が持てないために、
退屈に感じるのだ。
まだ物語の導入部分だからしょうがないと言えばしょうがないかな。

一方でムシュイキンとナスターシャは、非常に個性が強い人物だ。
僕は特にムシュイキンに興味を持った。

彼が初めてエパンチン家に行ったとき、
リザヴェータ夫人とその娘達との和気藹々とした談笑のなかで、
いきなり死刑執行の際の囚人の気持ちについて延々と語りだす。
(もちろん彼は死刑囚だったことはない)
そして家の娘の一人が絵を趣味としているのだが、
彼女がムシュイキンに対し、絵のテーマが決まらないと言うと、
「ギロチンの落ちてくる1分前の死刑囚の顔をお描きになっては。まだ処刑台の上に立っていて、いままさに板の上へ横になろうとしているときの顔を」(140頁)と言う。
このよく分からないぶっとんだ言動に思わず笑ってしまった。

その時彼が話した囚人の話は、非常に興味深く面白かった。
死刑執行のために刑場に引き立てられる際の囚人の心理描写は
非常に生々しく、迫力がある(作者の体験が元になっているらしい)。
また、その後で話した彼のスイス滞在時のエピソードも非常に面白く、
そのエピソードだけで一つの小説が書けてしまえそうな感じだ。

ムシュイキンの話は面白いので、
彼が早く登場してとにかくなんか喋ってくれないかと、読んでて期待してしまう。
同じく個性の強いナスターシャと彼が、この先物語で再開すると予想されるが、
それがとても楽しみだ。
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by komuro-1979 | 2004-10-16 03:26 | ロシアの小説

「老人と海」 ヘミングウェイ 新潮文庫

老漁師が一人で出漁し、4日にわたる死闘の末に巨大なカジキマグロを釣るも、
帰途サメに襲われ、釣った魚を食われてしまう・・・。

ただそれだけの話なのだが、非常に面白かった。

カジキマグロを捕まえるために、他に捕獲した魚を逃がし、
船のありとあらゆる設備を使い果たす。
体は傷つき、疲労のためになんども意識を失いそうになる。
陸では弱々しく見えるこの老人の、
漁にかける意気込みとその戦いぶりはすさまじい。

老人はカンジキマグロと戦ったが、自分の心とも戦っていた。
漁の途中、彼の心には何度も何度も孤独と弱気の波が押し寄せる。
一体彼は何回「あの少年がいたらなぁ・・・」と、口にした事だろう。
それでも勇気を奮い起こし、ついに打ち勝った。
そこに特に感動した。

死闘の末にようやくカジキマグロを釣り上げたが、帰途にサメに襲われる。
必死に抵抗を試みるも、結局、カジキマグロはサメに食われてしまう。
無情だ。
小説の最後の方の、旅行者の台詞がさらにその無情さに拍車をかける。

あの死闘は報われなかったのか?
・・・いや、
少年が老人の勇気をきっと引き継いでくれる。
そう思った。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2004-10-11 01:03 | アメリカの小説

「羊をめぐる冒険(下)」 村上春樹 講談社文庫

今日は台風が来てたし、やることがなかったので、
一日で読んでしまった。

全体を通じての感想。
こんなこと言うと村上春樹ファンがキレるかもしれないが、
正直、周りが言うほど面白くなかった。

主人公が淡々としていて、感情の起伏がほとんどない。
物語も淡々と進み、そしてどこか冷めている。映画の世界のようだ。
そういう物語の世界にイマイチ肌が合わず、没頭できなかった。
「羊がどうであろうが、主人公が生きようが死のうが知ったこっちゃない」
という気持ちになってしまった・・・。

また、結末がよくわからない。
羊って一体何?
羊男は何者?そして鼠との関係は?
耳の彼女と主人公との関係が終わってしまった理由は?
なんで自殺しなきゃいけないの?・・・などなど、
頭の悪い僕にはさっぱりわからなかった。
謎だらけだ。
小説の構成は、最初に主人公に投げかけられた謎が
だんだんと解明されていく形をとっているが、
僕にとっては解明されるどころか、ラストが近づくにつれて分からないところが増えていった。
それなのに主人公たちは勝手に納得し、
そしていつの間にか物語が終わってしまった(ように感じた)。

取り残された感じ。
すっきりしなかった。
個人的には、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の方が面白かった。

<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2004-10-10 01:13 | 日本の小説

「羊をめぐる冒険(上)」 村上春樹 講談社文庫

昨日と今日とで、上巻を読み終わった。

まず思ったのは比喩表現が面白いこと。
例えば、

「それはなんというか、恐ろしく孤独な建物だった。例えばそこに一つの概念がある。そしてそこにはもちろんちょっとした例外がある。しかし時が経つにつれてその例外がしみみたいに広がり、そしてついにはひとつの別の概念になってしまう。そしてそこにまたちょっとした例外が生まれるーひとことで言ってしまえば、そんな感じの建物だった。」(112頁)

「世界ーそのことばはいつも僕に象と亀が懸命に支えている巨大な円盤を思い出させた。象は亀の役割を理解できず、亀は象の役割を理解できず、そしてどちらもが世界というものを理解できずにいるのだ。」(156頁)

・・・など。
他にも数え切れないほどたくさん面白い表現があった。


この小説の世界観は独特だ。
羊を探すというストーリー自体が独特だが、
登場人物の会話と思考が変わっている。
会話が文学的・哲学的でかつオシャレ。その上テンポが良くあっさりとしているのだ。
それが独特の世界観を構築している。

次に、読んだ感想。
面白いは面白いのだが、どうも入り込めない。
まず、上記の登場人物同士の会話。
最初は面白いのだが、だんだんと鼻につくようになる。
そして、みんな同じ性格をしているように思えるのは気のせいか?
どの人も哲学的で言葉遊びが好き。
特に女性が何人か登場したが、性格の見分けがつかない。
なんか好きになれないんだよね・・・。
疲れてしまうよ。
一人ぐらいおばかな人がいてもいいじゃんか。
・・・でもそうすると世界観が崩れてしまうのかなぁ・・・。
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by komuro-1979 | 2004-10-09 03:42 | 日本の小説

「クオ・ワディス(下)」 シェンキェーヴィチ 岩波文庫 

中巻を最後まで読んでブログを更新したあと、
下巻を読み始め、一気に最後まで読んでしまった。
この小説は面白すぎる。そして壮大で感動的だ。

下巻ではいよいよキリスト教徒の虐殺が始まる。
競技場で彼らが次々と惨殺されていく様子はあまりに残酷で、目を覆いたくなる。
その容赦のなさに、リギアが助かる見込みは絶望的とも思われた。
ウィニキウスが願ったように、
競技場に引き出され無残な死を遂げる前に、病気で安らかに死を迎えて欲しいと、
読みながら願ってしまった。
(どんな結末を迎えたかはネタばれなので控えます・・・。)

しかし、ネロの残虐さはすさまじい。
しかも自分の残虐性に対して無邪気であることが、さらにその残虐さを引き立てている。
でも、それがこの物語のスケールを大きくしていると思った。
他にもたくさんの人間が登場するが、どれも血が通っていて
物語に登場する必然性を感じさせる。
個人的には、最後まで自分の生き方を貫いたペトロニウス、それとキロンが気に入った。

それにしても、この小説で描かれるキリスト教徒の姿は、神々しささえ感じられる。
競技場での虐殺の最中さえ信仰を捨てず、ひたすら神に祈る様子もそうだが、
キリスト教徒のグラコウスが柱に縛り付けられ、火を放たれて死ぬ直前にさえ、
「妻子を奪い、暗殺者をさし向け、しかも自分がそのいっさいをキリストの名において許したのちもなお、自分を死刑執行者の手に渡した男」(194頁)であるキロンを目の前で赦した場面は、感動で鳥肌が立った。

感動といえば、この小説は感動尽くしだ。
その感動の場面を一々挙げたらきりがない。
下巻だけでも他に、ウィニキウスとリギアの永遠の愛、ペトロニウスとエウニケの最後や
ペテロが「クオ・ワディス・ドミネ?」と言った場面、ウルススの雄姿・・・ほかたくさんある。

これほど壮大で感動的な物語は他にないのではないか。

宗教色の強いところが気になる人がいるかもしれませんが、超オススメです。


<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2004-10-06 02:23 | その他の国の小説