カテゴリ:ドイツの小説( 18 )

「城」 カフカ 新潮文庫

(あらすじ)
測量士のKは、とある城の伯爵家から仕事を依頼され、
その所領の村に到着する。
到着したはいいものの、伯爵家からは仕事について何の連絡もない。
しかたなくKはその村で生活をすることにするが、
村人たちの奇妙な慣習や考え方に翻弄されることになる・・・。

不思議な小説だ。
まず、村人たちの思考回路についていけない。
理由なく役人たちを崇める一方で、
意味不明な理由でKを怒り、軽蔑する。
彼らは些細なことで突然キレるので手が付けられない。
また、村人たちだけじゃなく、Kの行動もかなりおかしい。
仕事の説明を求めて城にさっさと入ればいいのに、
どうでもいいことばかりに目を奪われ、回り道ばかりしている。
彼は何がしたいんだ?

そんなこんなで、頭のネジの外れた登場人物たちの織り成す不思議ワールドに、
すっかり頭が混乱。
それでも必死で食らいついていったのだけど、そんな努力もむなしく、
物語は突然、非常に中途半端なところで、なんの解決もないまま終わる。
一瞬、落丁かと思った。

結局、この小説を通じて作者は何を言いたいのだろう。
役所というものの不合理さや傲慢さ?
他所から来たものにとっては奇妙に感じられがちな、村人たちの慣習や考え方?
村の閉鎖性と他所者の孤独?
些細なことに振り回されて本来の目標を忘れがちな人間に対する警告?
人の心の移ろいやすさ?
考えてもさっぱり分からない。

・・・結論を言うと、
読んでて退屈だったというのが正直な感想。
村人とKの、本題から外れた論理的でない会話を、
長々と読まされるのは苦痛ですらあった。
カフカの有名な小説ではあるけど、残念ながら自分にはその楽しみ方が分からなかった。


<オススメ度>★★
[PR]
by komuro-1979 | 2006-04-04 20:59 | ドイツの小説

「ファウスト(下)」 ゲーテ 新潮文庫

上巻は楽しめたのだが、下巻は楽しめず。
半分ぐらい読んだところで挫折・・・。

楽しめなかった一番の原因は、ギリシア神話に関する自分の知識のなさにあった。
下巻では、ギリシア神話上の人物たちがたくさん登場し、
相互に会話を始める。しかもそれが延々と続く。
なので、神話に関する知識がないときつい。きついと言うか、お手上げだ。
僕は登場人物たちの性格や相互の関係などが全く分からず、
彼らの会話の面白さをほとんど理解することができなかった。

結果、ただなんとなく字面を追うだけの退屈な読書になってしまい、
こんな調子で最後まで読んでも何も残らないと思ったので、読むのをやめた。
作中にある詩的で美しい言葉や、含蓄ある言葉を、
ほんとはもっと味わいたかったのだが。

・・・
これからこの小説を読んでみようと思っている方は、
まずはギリシア神話の学習から始めたほうがいいかもしれません・・・。


<オススメ度>★★(挫折)
[PR]
by komuro-1979 | 2006-01-27 03:43 | ドイツの小説

「ファウスト(上)」 ゲーテ 新潮文庫

(あらすじ)
知識欲に溢れ、様々な学問を習得した大学者ファウストが、
世界の根源を究めようとして、魔法で悪魔(メフィストーフェレス)を呼び出し、契約をする。
若返りの薬を飲まされた彼は、少女グレートヒェンに恋をするが・・・。

この本は常々読みたいと思っていたのだけれど、
戯曲ものは苦手なので、今まで敬遠していた。

読み始めてまず、言葉がとても詩的なのが印象に残った。
日本語でも十分美しさが分かるのだが、できれば原書で読みたかった。
日本語に訳す過程で、どれだけ原作者の意図から離れて、
言葉それ自体の美しさが失われてしまったのだろうかと思うと、とても残念に感じる。
(この本の翻訳が悪いということではなく、翻訳するということそのものの限界の話です)

ストーリーは、ところどころ巻末の注釈を参照しなければ
意味がとれないところがあるが、基本的には分かりやすい。
世間と交わることを避けていたファウストが、
メフィストーフェレスによって力を与えられて世間と交わり、
その考え方を変化させていく過程は面白い。
えらそうなことばかり言っていたファウストが恋に夢中になる様子は、ちょっと可愛かった。
しかし、その恋の結末があまりに残酷だったのが、強く印象に残った。
[PR]
by komuro-1979 | 2006-01-25 02:27 | ドイツの小説

「青春は美わし」 ヘッセ 新潮文庫

「青春は美わし」と「ラテン語学校生」という2つの短編が収録されている。
2つ合わせても115Pしかないので、すぐに読み終わってしまった。

どちらも青春時代の恋愛を描いているのだけれど、
「青春は美わし」のほうは、これに加えて都会の人間が理想とするような故郷、
具体的には、美しい自然と、子供のころから変わっていない風景があり、
家に帰ると少し老けた思慮深い両親と、相変わらず騒がしい弟たちが出迎えてくれる。
少し近所を歩くと、成長した友人たちと、初恋の相手であったあの子との
懐かしい出会いがある。
そこでは都会とは違って、時間はゆっくりと流れ、しばらく滞在していると、
子供時代にかえったような、純真な気持ちになれる・・・。
そんな風な理想の故郷が、見事に表現されている。
そんな美しい故郷と、青春の甘酸っぱい恋愛とが、非常にうまく結びついていて、
読んでいると、まるで幻想的で美しい夢をみているような、
なんとも言えない不思議な気持ちになってしまう。

読後感は最高でした。超オススメです。


<オススメ度>「青春は美わし」★★★★★  「ラテン語学校生」★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-11-19 02:12 | ドイツの小説

「魔の山(下)」 トーマス・マン 新潮文庫

ようやく読み終わった。ほんとに時間がかかった。
この小説はもともと全般的に難しいが、
下巻に入り、ナフタとセテムブリーニとの間の議論の場面で、その難しさは頂点に達した。
あれを理解するには、ヨーロッパの思想史?もしくは哲学史?などの専門的知識が
必要なのではないだろうか(正直、どんな知識が必要なのかさえ分からなかった)。

前回の上巻の感想から、難しい難しいと連呼しているけど、挫折することもなく、
最後まで飽きずに楽しく読めた。

その理由として考えられるのは、まず、この小説で扱うテーマの豊富さにあると思う。
これらのテーマの中には、時間論や音楽論など、自分の興味のあるテーマがたくさんあり、
その部分を読んで主人公と共に考えを深めるという楽しさがあった。

次に、主人公がいろいろな人間と出会い、恋愛をし、考え方を変化させていくという、
ストーリーそれ自体の面白さがあると思う。
主人公は、最初あれだけ異常だと感じていたサナトリウムでの生活に次第に順応し、
結局はそこに住み着くまでになり、しまいには、
一般人の感覚からすれば明らかに不自由なそこで生活を「自由」だと思うようになる
その過程に、人間の慣れというものの怖ろしさを感じ、慄然とした。

ただ、ラストはちょっと尻すぼみな気がする。
主人公の目を覚ましたものがアレだとは・・・。
そう感じるのは、やはりアレを実体験したことのないからだろうか?
(ネタばれになってしまうために抽象的ですいません。ぜひ読んでみてください)

・・・
というわけで、分量多いし、哲学チックだし、言ってることが難しいので、
オススメ度は★3つにします。
でも、小説内でなされる議論のすべてが理解困難なほど難しいわけではなく、
また、ストーリーの進展と、これらの議論との関連性が薄い場合が多いので、
ストーリの骨子の部分と自分の関心のある理解可能な議論については熟読し、
他の部分は飛ばして読んでも十分に楽しめるのではないでしょうか。


<オススメ度>★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-11-16 16:19 | ドイツの小説

「魔の山(上)」 トーマス・マン 新潮文庫

(あらすじ)
主人公がスイス高原にあるサナトリウムで世間とは隔離された療養生活を送り、
そこにいる患者たちと出会い、別れ、成長していくという話。

主に主人公と他の患者との対話がメインで物語は進み、
会話のテーマは時間、音楽、病気、愛、死、精神と肉体、生理学、道徳など、
広い分野にわたる。

患者たちは、とても抽象的で難しい言葉で話すために、
その言っている内容を理解するのがかなり困難。
こんな奴らいないだろ~っていうくらい理屈っぽくて小難しいことばかり話す。ありえない・・・。
一読してだけでは意味が分からない箇所がたくさんあり、
そのたびに数ページさかのぼって読み返したりするので、
上巻を読むのに、同じぐらいの分量の他の小説を読む場合に比べて
2倍近くの時間がかかってしまった。
読後の疲労感はまるで分厚い学術書を読んだ後のようだった。

そんな難しい会話の連発のなか、
主人公のショーシャ夫人に対する恋は容易に理解可能なので、
この小説を読んでて唯一安らげる部分だった。
主人公が恋愛に関しては奥手でうぶであり、応援したくなる。
恋愛小説としても、とてもよくできていると思った。

ただ、上巻最後の
「君の膝頭の皮膚の匂いを嗅がせてくれたまえ・・・君の毛穴の発散物を嗅ぎ、君の柔毛を愛撫させてくれたまえ。」という告白は、ちょっと変態っぽくて笑ってしまった。
[PR]
by komuro-1979 | 2005-11-12 01:45 | ドイツの小説

「審判」 カフカ 岩波文庫

(あらすじ)
ごく平凡なサラリーマンであるKがある日突然逮捕されるが、
しかし身柄拘束はされず、日常生活をそのまま送ってよいという。
逮捕については、逮捕状がなく、罪名がわからない。
K自身、何の罪で逮捕されたのか全く思い当たらないし、
逮捕者に聞いてもはっきりしないばかりか、裁判所に出頭してさえはっきりしない。
とりあえずその後の訴訟活動を弁護士に任せるが、
弁護活動が上手くいっているのかどうか、そもそも裁判が進んでいるのかさえ分からない。
なにもかもがわからないのだ。
Kは裁判の不可解さ・理不尽さから、だんだんと心理的に追い詰められていく・・・。

文章は読みやすいのだが、
解釈が非常に難しい小説だ・・・。

作者は、刑事司法システムというものの不条理さと、
官僚システムの無責任さがいいたかったのだろうか?
確かに、法律を知らない一般人にとって、
裁判制度というものは未知で恐ろしいものだと思う。
法律用語は難解だし、裁判がどんな法則で動いているのかも分からない。
もし国家権力が一般人の法的無知を盾にとって、突然いわれのない罪で個人を逮捕し、
理由の開示を求めるその者を、難解な言葉と、官僚システム独特の責任回避術によって
煙に巻き、知らず知らずのうちに裁判を進めて、有罪を認定し、刑を執行する。
それはとても恐ろしいことだ。

小説でのKも、役人の誰に聞いても自分は下っ端というばかりで、
自己の裁判の最終的な決定権を握っているのが誰かなのかが全く分からない。
そして裁判の知識のないKは、裁判の状況がどうなっているのか、
弁護士の訴訟活動が進んでいるのか、それも全く分からない。
何もかも分からないまま結局刑が執行されてしまう。
その過程はとても恐ろしく、不可解で、不条理だった。

でも、それだと表面的な解釈のような気もする。
作者は個人の内面的な不安や弱さというものを、
法と個人との関係になぞらえているようにも思える。
最初、第九章の「掟の門」のたとえ話を読んだ時、
法と個人との関係をなぞらえたものというよりも、
人がある目的に向かって進もうとするときに起こる心理的障害(不安や葛藤など)を
表している、つまり、門の中が目的地で、門番が心理的障害のような気がしたのだ。
そう第九章を解釈すると、Kの物語に別の意味をもたせることができる気がする。

う~ん・・・。
この小説を読んだ人の読書感想を読んでも、
みなそれぞれ独自の解釈をしている。
多様な解釈を許すそのあいまいさが、この小説の魅力なのかもしれない。


<オススメ度>★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-08-02 20:05 | ドイツの小説

「郷愁」 ヘッセ 新潮文庫

(あらすじ)
自然に満ち溢れた山間の村を出て、都会暮らしをはじめた主人公ペーター。
長い都会暮らしのなかで、
文明生活に馴染まない自分の詩人としての本性を再確認することになり、
結局彼は故郷に安住の地を求める・・・。

自然風景の描写はとても素晴らしいと思った。
うまく言えないのだが、まるで木や山が生きていて、意志をもっているかのように、
生き生きと動的に描かれていた。
作者の自然に対する深い理解と愛情がひしひしと伝わってくる。

ストーリは、ペーターの過去を少年時代から現在まで順を追っているのだが、
各時代に割かれた記述が少なく感じられた。
その結果、その時その時に起こった色々な出来事に対する掘り下げが足りず、
少し消化不良に感じたのが残念だった。
とはいえ、ペーターが自分の本性を再確認していく過程は十分に面白かった。

それにしても、心に悩みを持つやや暗い少年が
自己にない性質を持った明るくて朗らかな友人と出会い、
一方で、美しくて完璧ともいえる女性に恋をするという展開は、
ヘッセの他の小説でも見た気がするが、
これはヘッセの一つの典型的なパターンなのだろうか・・・?


<オススメ度>★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-08-01 15:32 | ドイツの小説

「荒野のおおかみ」 ヘッセ 新潮文庫

(あらすじ)
自意識過剰で市民生活になじめないハリーが、
不思議な少女ヘルミーネと出会い、自己を解体していくという話。

今まで読んだヘッセの小説とは違って
ファンタジー色が強く、寓話的だった。
観念的、抽象的な記述が多く、はっきり言ってムズイ・・・。
特に「荒野のおおかみについての論文」の部分は
よく分からなくて、頭痛で寝込みそうになった。

全体を通じて寓話的なエピソードがいくつも挿入されていたが、
それらを通じて作者が何をいいたいのか一読しただけでは理解が困難なものが多く、
読むのにとても骨が折れた。
中でも特に、現代文明批判を暗喩するエピソードは分かりにくかった。

ただ、ヘルミーネがハリーの心に土足で入り込んで
ハリーの自己変革を強引に促すところは非常に面白かった。
ハリーはなお自己の殻に閉じこもろうとしてそれに抵抗を示すも、
結局はヘルミーネの手のひらで踊らされる様子は可笑しかった。
しかし僕はそうやって笑いつつも、
ハリーの悩みに共感できる部分があり、彼に自分の姿を重ね合わせていたせいか、
彼の滑稽さが自分の滑稽さでもある気がして少し胸が痛かった。
ヘルミーネのような少女に出会ったハリーを
本気でうらやましいと感じた自分は、もうダメなのかもしれない・・・。


・・・
とても難しい小説だと感じました。
情けないことですが、僕は一度読んだだけではあまり理解できませんでした。
再読するたびに理解が深まり、この小説に対する評価は変わる気がします。
オススメ度は再読するまでの暫定的なものとして、
星3つとしておきたいと思います。


<オススメ度>★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-07-28 01:50 | ドイツの小説

「春の嵐」 ヘッセ 新潮文庫

(あらすじ)
少年時代に事故で足が不自由になった
主人公クーンは、一般的な青春を諦めて音楽を志す。
その道で彼は有名なオペラ歌手であるムオトと出会い、不思議な友情が始まる。
クーンの名が世に出始めた頃、気高く美しい女性ゲルトールトと出会い彼女に心をするも、
その恋はムオトとゲルトールトとの結婚という形で幕を閉じる。
絶望に陥ったクーンだが、やがて諦観し、2人の愛を見守ることにする・・・。

事故によって青春の一部が奪われ、
悲しみに沈む主人公の心理描写は胸を打つものがあった。
そのせいか主人公に感情移入してしまい、
彼のその後の成長と成功、そして挫折がまるで自分のことのように感じられ、
先が気になってしょうがなかった。

それにしても、クーンのゲルトールトに対する愛、
ムオトとゲルトールトのお互いに対する愛、どれも非常に困難で苦しい。
それにも関わらず愛することをやめることができずに、
悩んで苦しむ姿は痛々しいものがあった。
ああいう愛は、外から見るとただただ苦しいだけに思えるのだが、
苦しいからこそより一層愛が深まるのだろうか?
そこらへんが自分にはよくわからないところだ。

ヘッセの小説はこの「春の嵐」を含め何冊か読んできたけど、
「車輪の下」以外どれも最高に面白かった。
なぜ面白いと感じるのか考えてみると、
主人公の中に自分の姿を見つけてしまうからだと思う。
というのは、今まで読んだヘッセの小説は
どれも悩みや不安を抱えた主人公の成長の物語だった。
そして彼らの悩みや不安は自分がかつて抱えていたか、
もしくは今現在も抱えているものばかり。
こういったものに対し、主人公はどう向き合い、消化していくのか。
その経過の中に、自分の悩みや不安に向き合うためのヒントが隠されている気がしてしまう。
そんな気持ちで読んでいるから、主人公に当然のように感情移入してしまい、
その結果、物語にぐんぐん引き込まれてしまうのだろう。

悩み多き人間にとって、ヘッセの小説ほど面白いものはない。
これからも読んでいきたいと思う。


<オススメ度>★★★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-07-22 00:46 | ドイツの小説