カテゴリ:小説以外の本( 22 )

「ドキュメント精神鑑定」 林幸司 洋泉社

猟奇的な事件が起こると,ニュース上では精神鑑定という文字が躍ることが多く,
以前より,精神鑑定そのものに興味を持っていたし,精神鑑定の対象者は
どんな人なのだろうという興味もあったことから,なんとなくこの本を手に取った。

気軽に手に取ったはいいが,精神鑑定の流れや病気について,
予想以上に丁寧に説明がなされており,新書ながら情報量は多い。
精神鑑定について詳しく知ることができる一方,読むのに骨が折れ,
特に第1章は,法律に興味がないと読むのは辛いかもしれないと感じた。

この本のメインは第3章。
著者は精神科医として20年以上のキャリアを持ち,精神鑑定を多数経験しているのだが,
その著者が実際に行った精神鑑定が10例ほど紹介されているのだ。
対象者の精神状態や言動に対し,どんな診断が下されるか,
鑑定人として法廷に立ち,証人尋問を受けるのはどういった気持ちなのか,など,
好奇心をそそられるところがたくさんあり,読んでて素直に面白い。

筆者は,精神鑑定の重要性を説きつつも,同時にその限界を示したうえ,
今後の精神鑑定はどうあるべきか,などといったところまで踏み込んだ記述がなされており,
その誠実な態度に好感を持てた。

興味がある人は是非手にとってみて下さい。 
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by komuro-1979 | 2007-02-12 22:32 | 小説以外の本

「必笑小咄のテクニック」 米原万里 集英社新書

小咄の構造を分析し,12種類に分けた上,各構造ごとに章立てし,
それぞれの章ではその構造に沿った小咄の例を豊富に紹介しながら説明している。
また,各章の最後には練習問題がついている。

小咄がきちんとした構造を持っていることは驚きであった。
この本に書かれていることを意識しながら,小咄を作る訓練?をしていけば,
いずれは笑いのとれる小咄を自分で作ることができそうな気がしないでもない。
例として紹介されている小咄はどれも面白く,読んでいて単純に面白い。

しかし,この本には,どうしても気に入らない点がある。
それは,著者が突然,小泉元総理の靖国神社参拝やその他諸々の政治的言動を採りあげて,批判を始めることだ。それもかなり高いテンションで。一応,話の流れに沿うように,小泉元総理の発言を小咄風にして紹介するのだが,小咄としては全く面白くない。その上,著者の元総理批判は見方が偏りすぎていて稚拙であり,その点でも救いようがなく,読んでて冷めるばかりだ。

その点を除けば,良書であると思う。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2006-12-19 22:09 | 小説以外の本

「I LOVE モーツァルト」 石田衣良 幻冬舎

売れっ子作家の書いたモーツァルト入門本。
内容を大きく分けると、①著者のモーツァルト体験②著者の思い入れのある10曲
③モーツァルトの生涯についての3つから構成されている。
②で紹介された曲は、付属のCDに収録されている。

②と③はよい。
さすが人気作家だけあって、文章がうまく、
曲の紹介文を読むと、その曲を聴いてみたい気にさせられる。
ただ、①はもうちょっと抑えてほしかった。
著者の小説の話や、自分の成りあがりストーリーなどは、
著者のファンじゃないと楽しめないと思うし、
「くどきのテクニックにクラシックを」など、
どうでもよい馬鹿馬鹿しい章があるのは勘弁して欲しい。
ここを控えめにし、②と③を厚くすれば
万人向けのかなり良い入門書になったと思う。

でもまぁ、CD付きなのに値段が1300円程度と安いので、お得感はある。
だから、オススメ度は★4つにしておきます。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-04-08 12:11 | 小説以外の本

「20世紀絵画 モダニズム美術史を問い直す」 宮下誠 光文社新書

20世紀の絵画の有名どころを採りあげて解説していく中で、
「具象絵画=分かりやすい、抽象絵画=分かりにくい」という一般的感覚に
疑問を投げかけ、新しい解釈パラダイムを提案することを目指した本。

~主義などの美術用語?が、ろくな説明もなく多用されるので、
僕のような絵画に最近興味を持ち始めた初心者が読むには、
やや敷居が高いと感じた。
そのうえ、著者は抽象的で難しい単語を好んで使うので、
読むのにとても骨が折れる。
もうちょっと簡単な言葉で説明できないものか。

一番不満なのは、紹介される絵画が口絵を除き、すべてモノクロであること。
モノクロの絵画を指して、「この絵の空の青が~」とか言われても、全く伝わらない。
なぜオールカラーにしないのだろうか・・・?

このような不満点はあるが、絵画の説明はすばらしい。
僕が今までに考えたこともない、専門家の視点から絵を解釈しているので、
「こんな風な絵の見方もあるんだ」と、素直に感心した。
この本を読んだことで、自分の絵画鑑賞眼が少し精密になった気がする。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-03-30 18:06 | 小説以外の本

「社会調査のウソ」 谷岡一郎 文春新書

普段、新聞などで、毎日のように目にする社会調査。
例えば、「死刑制度廃止に賛成○○%、反対○○%」とか、「内閣支持率○○%」とか。
僕はこれまで、こういった調査を目にしても、詳しく分析しようとせずに
そのまま受け入れていた。
しかしこの本を読むと、そういう安易な態度がとても危険であることが分かる。

著者は「世の中に蔓延している社会調査の過半数がゴミである」と言う。
そんな大げさな・・・、と思って読み始めるのだけど、
次から次へとどうしようもなく(調査方法や分析が)杜撰な、
ほんとにゴミと呼ぶしかない調査がたくさん出てくるので、
まさに著者の言うとおりであると納得してしまう。
そういうゴミ調査が、大新聞や国家機関によってなされる
ことが往々にしてあるというのが恐ろしい。

本書はこのようなゴミ調査の例を多数挙げた上で、それをきちんと批判し、
なぜこういった調査がうまれるのか、その原因を究明するという構成で書かれている。
本書を読み終える頃には、社会調査を批評する基本的な能力を
身つけることができるだろうと思う。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-03-27 18:03 | 小説以外の本

「マンガでわかる統計学」 高橋信 オーム社

突然統計学の勉強がしたくなり、ネットで入門書を探していた時に出会った本。
僕は複雑な数式をみると吐き気を催すような、典型的な文型人間であるから、
マンガがないとダメだ。読む気がしない。
(そもそも、そんなんで統計学を学ぼうとするのは間違っているのだけれど・・・)

マンガは非常によくできている。
絵が上手くて、主人公の女子高生がとてもカワイイ。
ギャグもなかなか上手なので、読んでて楽しい。

肝心の統計学の部分は、初学者でも十分ついていけるように、
分かりやすく丁寧に解説してくれるので助かる。
個人的には、受験生時代に散々世話になった「偏差値」がどういうものなのか、
この本を読んでようやく分かったのがうれしかった。

マンガがあるからといって、統計学の理論の理解が進むわけではないが、
勉強の心理的負担がとても軽くなる。
それは初学者が勉強を続ける上でとても重要なことであり、
その点で本書は特にオススメできる。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-03-25 01:03 | 小説以外の本

「君主論」 ニッコロ・マキアヴェッリ 講談社学術文庫

前回読んだバルザックの「幻滅」で、マキアヴェリズムという言葉に出会った。
辞書をひくと、「目的のためには手段を選ばない、権力的な統治形式」とあり、
マキアヴェリという人が、「君主論」という書物の中で説いた考え方であることが分かった。
「幻滅」のなかで神父が説いた悪の道徳論に共通するものを感じ、興味を持ったので、
早速、この本を手にとってみた。

どんな非情なことが書いてあるのかと、楽しみにして読み始めたけど、
書いてあることはどれも真っ当なことのように感じられたので、少々拍子抜けした。
著者が非情な手段を薦めるのも、それが統治のためのもっとも有効な手段である場合に
限定していて、常に非情であれと言っている訳ではなかった。そりゃそうだ。

君主のために書かれた書物であるから、
他国との同盟についてだとか、兵士についてだとか、
現代人にとっては関係がないテーマが多い。
でも、だからといって、読んで無駄とは思わなかった。
というのは、著者の様々な政策論は鋭い人間観察に基づいており、
統治者との関係性のなかで、人間というものがどういうものかを鋭く分析している。
人間の本質が今も昔も変わらないことを考えると、
これらの分析は現代人の人間関係を考える上で、参考になると思えたのだ。
特に、管理職にある人は、読んで損はしないと思う。


<オススメ度>★★★
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by komuro-1979 | 2006-03-18 19:30 | 小説以外の本

「はじめての現象学」 竹田青嗣 海鳥社

著者の本はこれで三冊目。
著者の本は、哲学というものを分かりやすく、一般人に身近なものとして
紹介してくれるので、哲学初心者でも十分楽しめる。

この本では、「想像変容」「還元」などの現象学の難しい用語を、
日常生活のありふれた事象に例えつつ、噛み砕いて説明してくれるので、
非常に分かりやすかった。
あとがきに言うとおり、「普通の人間が小説でも読むように読めるような哲学書」だと思う。
現象学という学問が、自分と他人との関り方を考える
ひとつのツールだということがよく分かった。

ただ、著者は現象学については、前に「現象学入門」という本を書いており、
「「現象学入門」で説明したので簡潔に説明する」という
記述が本書の中でたくさん出てきたので、先にそちらを読んでおいた方が
より理解が進むかもしれない。

やや不満な点を言えば、現象学の各論点の説明に入る前に、
もう少し現象学全体の、総論的な部分を充実させて欲しかったと思う。
個々の議論はとても分かりやすいのだけれど、
それが現象学という思想体系のどこに位置づけれられているのかが、
注意深く読んでないと分からなくなってしまい、
本を読み終わった後、「結局、現象学ってなんだったのだろう?」となってしまう。
そのため、僕は一度読んだ後、すぐに読み返す派目になってしまった。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-03-05 18:00 | 小説以外の本

「中平卓馬の写真論」 中平卓馬 リキエスタの会

この本は某書籍通販サイトで、なんとなく注文してみたのだけれど、
予想外の大当たりだった。
著者の感性の鋭さ、優れた分析力に圧倒されまくり。
写真論とあるが、芸術論、メディア論としても読める。
やや難しめの歯ごたえのある文章が並んでいるけど、
その内容の面白さと、わずか84Pという薄さとが相まって、あっという間に読み終わった。
著者のことは全く知らなかったが、
すごい有名な写真家らしいことを後で(ネットで調べて)知った。

全般的にとても面白かったのだが、ひとつだけよく分からなかった点がある。
著者は、主観を世界に投影すること、つまり、
自分の「世界はこうあるべき」というイメージから出発して世界を認識し、
その認識を作品に反映させるという今までの手法を止めて、
自分の主観から離れ、世界そのものの(客観的な)姿をとらえて、それを作品にすべきという。
しかし、作品を作る際に、自分の主観から離れるなんてことは、本当に可能なのだろうか?

また、そもそも、自分の主観から出発して世界を捉えて作品化することが、
なぜいけないのか。
著者は、それは人間の思い上がりだというが、それだけでは説明が足りないように感じた。


<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2006-02-02 03:41 | 小説以外の本

「メディア批判」 ブルデュー 藤原書店

これまで、メディア批判(主にテレビ批判)と聞くと、
メディアと国家権力や商業主義との結びつきや、
視聴率至上主義に対する批判を思い浮かべていた。
この本ではそれに加えて、
メディアの政治・思想・文学・芸術に対する影響まで分析し、
メディアがそれらを貧困化して瀕死の状態にさせているとまで言い切っているのが、
とても新鮮で面白かった。

これを読むと、ワイドショーなどによく登場してくる識者たちを、
無意識的に批判的な目で見てしまうこと請け合いである。
(・・・これは余談だけど、テレビのワイドショーなどである問題を扱う場合に、その問題の専門家に解説を求めるのはいいのだけれど、彼らがコメンテーターとして番組に常駐し、専門外のことまでしたり顔で意見を言う様子に腹がたってしょうがない。彼らは恥ずかしくないのだろうか。専門外のことは素人だろと、つっこみたくなる。)

本の内容は文句がないのだけれど、
翻訳本独特の読みにくさがあるために、文章の流れがつかみにくい。 
また、フランスのメディアを例に挙げて説明しているが(著者はフランスの社会学者)、
日本人には馴染みがないのも辛い。
その点をマイナスして、オススメ度は★4つにします。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2006-01-30 01:49 | 小説以外の本