「人間の土地」 サン=テグジュペリ 新潮文庫

職業飛行家である作者が,実際に体験した冒険を紹介し,
その中で人間の本質というものを探求した小説。

最初に惹かれるのは文章。非常に硬質であり,男臭さを漂わせながらも,
感情描写や自然描写には繊細さがあり,詩のようでもある。
不思議であるが,素晴らしい文章。読み始めてすぐに小説の世界に引き込まれた。

この小説で紹介される冒険は,例えば,「砂漠に不時着し,喉の渇きと疲労によって生命の危機に陥るも,奇跡的に助かる」など,どれも劇的で相当興味深い。
しかしこの小説の醍醐味は冒険それ自体ではなく,そういった冒険の中,作者がどんな行動をとり,どんな風に感じたかを示すことによって,人間の本質とは何かを考えさせられるところにあると思う。

大自然の中や,危機的状況の中で見られる人間の高貴さ。
そういったものを失ってしまった都市部に暮らす人々に対し,作者は警鐘を鳴らす。
小説を読み終わったとき,大げさでもなんでもなく,これまでの自分の生き方を振り返らざるを得なかった。そういった力がこの小説にはあると感じた。

手放しで絶賛できる小説。
やや哲学チックであり,苦手意識を持つ人もいるかもしれませんが,
四の五の言わず,是非読んでみてください。
超オススメです。


<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2007-02-12 23:07 | フランスの小説
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