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「ティファニーで朝食を」 カポーティ 新潮文庫

表題の小説ほか,3篇の短編小説を収録。

「ティファニーで朝食を」は,ホリーのその謎めいた生い立ちと,予測不能な行動,そして彼女に振り回される男たちの描写などを通じて,ホリーという女性の魅力が充分に表現されていた。特に,飼い猫を巡ってホリーが感傷的になるエピソードは,読んでてホロリとさせられると共に,普段は自由気ままで気の強いホリーの別の一面を見せつけられ,彼女により感情移入するきっかけとなった。
ただ,ストーリーは結局,ホリーの自由気ままな暮らしを主人公の視点から追うだけであり,これではいくらホリーが魅力的と言っても飽きてしまう。正直それほど面白い小説とは思わなかった。

この小説よりもむしろ,「ダイヤのギター」のほうが断然面白かった。
「ダイヤのギター」は,殺人罪で99年の刑を言い渡された,ある受刑者の話。
娑婆に出ることを諦め,刑務所内で平穏な暮らしをしていたところ,新しく入所してきた男が脱走を持ちかけてきたことがきっかけで,彼の心はすっかり乱れてしまう。
一度は捨てたが,なお捨てきれない「自由」というものへの憧れが,ダイヤのギターを通じて見事に表現されており,読後感は素晴らしかった。


<オススメ度>「ダイヤのギター」★★★★★ 他★★★
by komuro-1979 | 2007-01-08 17:40 | アメリカの小説
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