人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「中平卓馬の写真論」 中平卓馬 リキエスタの会

この本は某書籍通販サイトで、なんとなく注文してみたのだけれど、
予想外の大当たりだった。
著者の感性の鋭さ、優れた分析力に圧倒されまくり。
写真論とあるが、芸術論、メディア論としても読める。
やや難しめの歯ごたえのある文章が並んでいるけど、
その内容の面白さと、わずか84Pという薄さとが相まって、あっという間に読み終わった。
著者のことは全く知らなかったが、
すごい有名な写真家らしいことを後で(ネットで調べて)知った。

全般的にとても面白かったのだが、ひとつだけよく分からなかった点がある。
著者は、主観を世界に投影すること、つまり、
自分の「世界はこうあるべき」というイメージから出発して世界を認識し、
その認識を作品に反映させるという今までの手法を止めて、
自分の主観から離れ、世界そのものの(客観的な)姿をとらえて、それを作品にすべきという。
しかし、作品を作る際に、自分の主観から離れるなんてことは、本当に可能なのだろうか?

また、そもそも、自分の主観から出発して世界を捉えて作品化することが、
なぜいけないのか。
著者は、それは人間の思い上がりだというが、それだけでは説明が足りないように感じた。


<オススメ度>★★★★★
by komuro-1979 | 2006-02-02 03:41 | 小説以外の本
<< 「ボヴァリー夫人」 フローベー... 「メディア批判」 ブルデュー ... >>