「金閣寺」 三島由紀夫 新潮文庫

(あらすじ)
吃音(どもり)によるコンプレックスにまみれた青年僧が、金閣寺に放火するという話。

難しい。一回読んだだけでは、作者の言わんとすることをちゃんと理解できなかった。

まず、比喩が難しい。とても技巧的なので、頭にすっと入らない。
この小説は最後までそういう難しい比喩に溢れているので、
一文一文かなり気合を入れて読まねばならず、
比喩の解釈に気をとられているうちに、全体の流れを見失ってしまった。
「木を見て森を見ず」状態になってしまったのだ。

次に、主人公は、コンプレックスの塊のような人間であるがゆえに人生を楽しめないのだが、
彼のその屈折した心情がなかなか理解できなかった。
僕は主人公のような質のコンプレックスを抱えたことがない上に、
心理描写が、難しい比喩と抽象的概念を用いてなされているので、
なおさら分かりにくかった。

では、楽しめなかったのかというと、そうではない。
比喩は難しいのだけれど、とてもよく練られていて、感心しきりだった。
そのものの本質をずばりと突いた、切れ味鋭い比喩とでもいえばいいのだろうか。
天才的な日本語感覚だと思う。
あと、ところどころで披露される、作者の哲学がとても印象的だった。
「われわれが突如として残酷になるのは、うららかな春の午後、よく刈り込まれた芝生の上に、木洩れ陽の戯れているのをぼんやり眺めているような、そういう瞬間だ」という一文は、
特に印象に残った。

すごい小説であることは間違いない。感覚的にそう思った。
だから絶対に再読したいと思う。
この小説は何度も読み返すことによって、
初めてその面白さが十分に現れてくるような気がする。
次回読むときは、主人公と金閣寺との関係の変遷を、もっとちゃんと掴みたい。


<オススメ度>★★★
[PR]
by komuro-1979 | 2005-12-23 19:20 | 日本の小説
<< 「デイヴィッド・コパフィールド... 「まなざしのレッスン」 三浦篤... >>