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「哲学思考トレーニング」 伊勢田哲治 ちくま新書

僕は哲学という学問について全くの素人だから、
哲学と聞くと、実生活に何の役にも立たない学問だと思ってしまう。
でも著者によれば、哲学の思考法の中には、
実生活において物事を判断する際の思考ツールとして役立つものがたくさんあるらしい。
本書はそういう思考ツールを紹介し、クリティカルシンキングの方法を示す本です。

(感想)
第4章「価値観の壁をどう乗り越えるか」が面白かった。
価値観に基づく主張(例えば「死刑制度は廃止すべきだ・すべきでない」)は、
結局は個人の価値観の違いに帰するから、
こういった主張同士を戦わせても議論はかみ合わず、
そもそも議論するだけ無駄だとさえ思っていた。
でも、実は本書のようなクリティカルシンキングを用いれば
議論の焦点を合わせ、ある程度実のある議論が可能だということを示してくれたのが、
非常に新鮮だった。

読むにあたって哲学の知識が不要であるのがよい。
分類としては、哲学の本というより、クリティカルシンキングの本だと思う。
文章が論理的で読みやすく、分かりやすいし、
巻末にこれまでの各章のまとめや参考文献などが
挙げられており、読者に親切な本だと思った。


<オススメ度>★★★★
by komuro-1979 | 2005-09-06 18:42 | 小説以外の本
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