「審判」 カフカ 岩波文庫

(あらすじ)
ごく平凡なサラリーマンであるKがある日突然逮捕されるが、
しかし身柄拘束はされず、日常生活をそのまま送ってよいという。
逮捕については、逮捕状がなく、罪名がわからない。
K自身、何の罪で逮捕されたのか全く思い当たらないし、
逮捕者に聞いてもはっきりしないばかりか、裁判所に出頭してさえはっきりしない。
とりあえずその後の訴訟活動を弁護士に任せるが、
弁護活動が上手くいっているのかどうか、そもそも裁判が進んでいるのかさえ分からない。
なにもかもがわからないのだ。
Kは裁判の不可解さ・理不尽さから、だんだんと心理的に追い詰められていく・・・。

文章は読みやすいのだが、
解釈が非常に難しい小説だ・・・。

作者は、刑事司法システムというものの不条理さと、
官僚システムの無責任さがいいたかったのだろうか?
確かに、法律を知らない一般人にとって、
裁判制度というものは未知で恐ろしいものだと思う。
法律用語は難解だし、裁判がどんな法則で動いているのかも分からない。
もし国家権力が一般人の法的無知を盾にとって、突然いわれのない罪で個人を逮捕し、
理由の開示を求めるその者を、難解な言葉と、官僚システム独特の責任回避術によって
煙に巻き、知らず知らずのうちに裁判を進めて、有罪を認定し、刑を執行する。
それはとても恐ろしいことだ。

小説でのKも、役人の誰に聞いても自分は下っ端というばかりで、
自己の裁判の最終的な決定権を握っているのが誰かなのかが全く分からない。
そして裁判の知識のないKは、裁判の状況がどうなっているのか、
弁護士の訴訟活動が進んでいるのか、それも全く分からない。
何もかも分からないまま結局刑が執行されてしまう。
その過程はとても恐ろしく、不可解で、不条理だった。

でも、それだと表面的な解釈のような気もする。
作者は個人の内面的な不安や弱さというものを、
法と個人との関係になぞらえているようにも思える。
最初、第九章の「掟の門」のたとえ話を読んだ時、
法と個人との関係をなぞらえたものというよりも、
人がある目的に向かって進もうとするときに起こる心理的障害(不安や葛藤など)を
表している、つまり、門の中が目的地で、門番が心理的障害のような気がしたのだ。
そう第九章を解釈すると、Kの物語に別の意味をもたせることができる気がする。

う~ん・・・。
この小説を読んだ人の読書感想を読んでも、
みなそれぞれ独自の解釈をしている。
多様な解釈を許すそのあいまいさが、この小説の魅力なのかもしれない。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-08-02 20:05 | ドイツの小説
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