「蝿の王」 ウィリアム・ゴールディング 新潮文庫

(あらすじ)
戦争のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃を受けて、
南太平洋の孤島に不時着した。
生き残ったのは6歳から12歳ぐらいの少年たちだけ。
最初、彼らは秩序だった生活を維持し、南国リゾート気分を満喫するが、
長引く孤島での生活は次第に少年たちの健全な心を蝕み、
目に見えぬ「獣」に怯えるようになる・・・。


小説の最初は、島での生活を楽しむ少年たちの様子が続き、
ストーリーに起伏が無いためにやや退屈だった。
しかし少年たちの結束に亀裂が入り始め、
ラーフとジャックの対立が決定的になるあたりから、一気に物語に引き込まれた。

最初はみんな秩序を守って仲良く楽しく過ごしていた。
しかし孤島での生活という異常な状況が長引くにつれて、
ラーフやピギーたちのような常識と秩序を重んじる者たちはやがて少数派となり、
ジャックのような破壊と欲望を重んじる者たちが多数派となる。
後者に属する子供達には理屈は全く通じない。
救助されるための方策すら尽くそうとせず、本能のままに生きようとする。
ラーフやピギーがなんとか秩序を取り戻そうと試みるが失敗し、
かえって火に油を注いでひどい目にあわされる様子には、
気分が重くなった。

小説のなかで一番印象に残ったのは、サイモンが蝿の王と対面するシーン。
蝿の王の語った言葉や姿形を含めたいろんな意味でのおぞましさは、
すごくインパクトがある。
そしてこのあたりから物語は寓意小説っぽくなっていく。
読んでいて僕は、この島は全世界の縮図だと思った。
ラーフやピギーやジャックのような人間と、
彼らの起こした事件は、現実世界でいくらでも似たような例がいくらでもあると思ったのだ。
誰の心にも存在する「獣」。
サイモン以外の子供たちはそれと向き合うことができなかったがゆえに
悲劇的な結末へと向かっていった。
では、今の世の中の大人たちはどうだろう?
「獣」とちゃんと向き合っているのだろうか?
読み終わった後、色んなことを考えてしまった。


<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-02-25 03:02 | イギリスの小説
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