「クヌルプ」 ヘッセ 新潮文庫

定職につかず、各地を放浪するも、
その性格から行く先々で歓迎された、クヌルプの生涯を描いた作品。
125ページの短い小説だけど、すごく心に残った。

クヌルプは各地を放浪して、
仕事と家族を持ち日々の生活に追われている人々に癒しを与えつつも、
そのような人々の生き方を心の中では軽蔑する。
そして生涯、自由気ままで詩的な生き方を貫くのだが、
その楽しげで気楽そうな外面に反し、胸の中ではずっと孤独を感じていたという。
小説中の「クヌルプの思い出」の章で、
彼の胸に巣食うその孤独の一端が垣間見える。
僕は、この小説も「デミアン」と同じく、
人は本来孤独であり、それに耐えて生きていかなくてはならないということが
主要なテーマの一つなんだろうなと感じた。

また、歳をとったクヌルプは、
今までの自分の安定しない、軽薄ともいえる生活を振り返り、
自分の人生は無意味だった後悔する。
しかし最後の最後、
そういう生き方したことを神との対話によって受け入れる。
そこに作者の、自分らしい生き方を貫く者に対する
エールのようなものがこめられているように感じた。
「デミアン」では作者の言う「孤独」の辛さ、重さが強調され、
読み終わった後に気分が沈んだのと違い、
今回は読後感がとても良かった。

・・・
オススメ度は星5つ!
これまで読んだヘッセの小説と同じく、
自分というものを見つめるのにいい小説。
内容面の良さもさることながら、
文章の流れがよく、とても美しいと感じました。
自然描写もとても上手くて、
頭の中で美しい情景が次々と浮かんでくるようです。

とてもオススメ。
ぜひ読んでみてください。


<オススメ度>★★★★★
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by komuro-1979 | 2005-01-21 17:24 | ドイツの小説
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