「デミアン」 ヘッセ 新潮文庫

主人公シンクレールが、年長の友達デミアンをはじめ様々な人物と出会い、
自我を形成していくという話。

文章に翻訳文独特の読みにくさを感じた。
でも小説の前半、シンクレールが幼少時代に体験した出来事とそれに伴う感情は、
僕自身も体験したものなので、そこは理解が容易だった。
例えば、辛い学校生活と、善良で温かい家族に囲まれた家庭生活との
落差に対する苦しみは、幼いころの僕もなんとなく感じていた。
作者の的確な心理描写によって、
そのような漠然とした感情がはっきりした形に炙り出されるので、
読んでてその当時の記憶と感情が生々しくよみがえり胸が苦しくなった。

後半は難しかった。半分お手上げ。
シンクレールがようやく自分の人生の指針のようなものを見つけるのだけど、
それがかなり抽象的・哲学的で分かりにくかった。
特に「自分の運命を見出す」というようなフレーズが何度も出てくるが、
ここでいう「運命」とは何かがつかめなかったのが痛い。
自分の本当の心・欲求に従った生きかた(目標?)のようなものが「運命」でいいのかな?
それを前提に自分なりに作者の言いたかったこと(=シンクレールの到達点)を
解釈してみると、

「人は自分の運命を見出し、周囲の人間や出来事に惑わされず、
 ひたすら自分の運命に従って生きる事が必要。
 その運命は決して他者から与えられるものではなく自己固有のものであり、
 そうであるがゆえに他者は手本にならないから、運命を生きる人はいつも孤独。
 だけどその孤独に耐えて生きてゆくべきだ」

ということになりそうだが、これはとても厳しい。
運命を生きることの難しさと孤独さは、
運命を生きる人であるシンクレールやデミアンによってある程度推察できるのだが、
僕には耐えられそうもないと思った。

・・・
哲学的で難しいですが、
この小説に真剣に向き合えば向き合うほど
読んで得られるものは大きいと思います。
ぜひ読んでみてください。

<オススメ度>★★★★
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by komuro-1979 | 2005-01-15 01:58 | ドイツの小説
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